●声に出して語る

 多くの人はキャリア・チェンジの混乱にもまれながら、内省が洞察のひらめきをもたらしてくれると期待する。

 しかし、私が『ハーバード流 キャリア・チェンジ術』のリサーチで学んだように、孤独な内省は、積極的な実践を伴わない限り、危険である。孤独な内省は白昼夢から抜け出せなくなり、当然ながら金を稼げる仕事にも、キャリアの充実にも結びつかない。

 内省とは、逆説的に言えば、気心の知れた同士の社会的な交流の中で、声に出して語ることによって育まれる行為である。互いに反応して、共感し、同情し、疑問を投げかけ、ボディランゲージを読み取り、自分の経験を共有しながら高めていくのだ。

 キャリア・チェンジを講義で学ぶ利点の一つは、キャリア・チェンジを考えている人という共通項を持つコミュニティに参加できることだ。

 自分が何をしたいのか、なぜ変化を求めているのかというストーリーを組み立てて語る。そのシンプルな行為を通じて自分の考えが明確になり、変化を起こすと公言することが、前に進む力になる。どんなに熟練のストーリーテラーに聞いても、聴衆の前で、ライブで練習することに勝るものはないと言うだろう。

 もっとも、自己隔離とソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)を強いられる現状では、それさえも難しい。しかし、少しの意欲と工夫があれば、方法は見つかるだろう。

 ソーシャル・ディスタンシングを尊重して散歩をする、キャリアコーチとオンラインで話をする、ズームのグループをつくって定期的にそれぞれの計画を共有するなど、自分の思いを声に出して説明する機会を見つけよう。

 最後に、この危機にあってキャリアの再構築を考えている人は、覚えておいてほしい。いまこそ、行動を起こす時だ──ただし、一人でやろうとしないこと。


HBR.org原文:Reinventing Your Career in the Time of Coronavirus, April 27, 2020.


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