HBR Staff/PeopleImages/Getty Images

HR部門の仕事の大半は人との関わりで成立しているため、業務の定量化が難しく、アナリティクスと最も縁遠いようにも思える。しかしながら、筆者らが23ヵ国1500人超を対象に実施した調査によると、数字を扱う財務部門と比べても、HR部門はデータ分析をより積極的に導入していることが判明した。


 私はこの10年間、HR部門は、データアナリティクスの最先端を行く部門の一つになる可能性を秘めていると主張してきた。

 その力点はあくまで、「可能性」にあった。しかし、いまは違う。

 私がオラクルと協働で実施した最新のグローバル調査では、HR部門がビジネスで最も分析的な部門の一つであり、財務部門のように定量的な情報を中心に扱う部門をやや上回ることが示されている。多くの組織のHR部門が、予測的モデルや処方的モデルといった先進的な分析法を用いて、人工知能(AI)まで駆使している。

 これは10年前と比べると、隔世の感がある。2010年、私が人材分析(タレント・アナリティクス)の利用に関する研究(ジーン・ハリス、ジェレミー・シャピーロとともに、これを主題とする論文を発表)を始めた当時、真に洗練されたHRアナリティクスの能力を持つ企業としてはグーグル、それにカジノを展開するハラーズ・エンターテインメント(現シーザーズ・エンターテインメント)くらいだった。

 相当量のレポーティングは行なわれていたが、予測的分析はさほど行われていなかった。また、HR部門内にデータアナリティクスの専門要員がいるケースは、ごくわずかだった。「HRアナリティクス」と言えば通常、その組織に従業員が何人必要かとか、従業員のやる気を測る最良の方法は何かといった話を指していた。

 現在の状況はかなり違うだろうと、前述の最新調査の結果が出る前から私は推測していた。いまでは大企業のほとんどが、たとえ小さくてもピープル/タレント/従業員/HRのアナリティクスチームを持っている。このテーマに特化したカンファレンスも数多く開催されている。今日の組織が、人員の増加率や人員削減、エンゲージメント、その他の重要な変数をモデル分析するのは極めて当たり前のことになっているのだ。