常に数字を扱う財務部門より、HR部門のほうが先進アナリティクスに馴染んでいるのはなぜだろうか。

 私が数年前から気づいていたのは、財務部門やそのトップであるCFOが、従来からの記述的分析やレポーティングをとても巧みに駆使する一方で、より先進的なデータアナリティクスへの一歩を踏み出せずにいる点だった。そこに例外はあるものの、HR部門がより先進的なデータアナリティクスを取り入れている割合が高い理由を説明できる。

 ただし、ビジネスのどんな部門も単独でデータを保持し、その分析を行うわけではない。オラクルがHRと財務の幹部をあわせて調査した理由の一つとして、これら2部門が協働する必要性が増していることが挙げられる。

 人件費は組織で最も大きな費用を占めている場合が多く、会社の財務状態が人員数やその構成の変化を決定づける。この調査でわかったのは、HR部門と財務部門のあいだでかなりの協働と相互尊重が見られ、協働の必要性が高まっていることである。

 たとえば、「HRデータと財務データの一体化は、今年の我々にとって最優先事項である」という質問に82%の回答者が同意または強く同意しており、同意しなかった人は5%にすぎなかった。ただ、この調査の後でいくつかのインタビューを実施したところ、データのさらなる共有や、アナリティクスでのさらなる協働の余地はまだまだあることがわかった。

 もちろん、HRアナリティクスのすべてがバラ色というわけではない。HR部門での分析ツールの利用が、分析を解釈する力や、それを実践へと移す能力を上回っているのを見て、私はとても興味をそそられた。

 HR部門にとって「開発や向上が最も必要とされる」分析スキルは何かと尋ねたところ、最も多い回答は「問題解決のためにデータを活用して、分析すること」だった。「定量分析の能力や理論展開の能力を養う」「事業部門のリーダーにデータを交えたストーリーを語ることによって助言すること」という回答も多かった。

 私の経験からすると、そのようなスキルは他の部門でも同様に欠けている。おそらくこれは、HR部門のアナリティクス能力が成熟した表れの一つだろう。

 企業のさまざまな部門では長年、分析スキルを持つ人材の不足を嘆く声が聞かれてきた。HR部門もいま、同じ悩みを実感しているのである。


HBR.org原文:Is HR the Most Analytics-Driven Function? April 18, 2019.


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