新型コロナがもたらす参入機会
こうした変化は、伝統的なヘルスケア関連企業、そして非ヘルスケア企業に大きな機会を生み出している。
まず、製薬・医療機器メーカーなどの伝統的なヘルスケアプレーヤーにおいては、受診行動の変化がもたらす診療現場のシフトに、いかに対応できるかが鍵となる。オンライン診療の拡大により処方行動および処方元に変化が起きる中で、より医療関係者との緊密な連携ができる企業に機会がある。
また、MR(医薬情報担当者)の訪問規制強化は新型コロナ危機後も続く可能性がある。そのため、MRは対面プロモーション重視のスタイルから、きめ細やかなニーズの把握に基づき、デジタルを活用して適切な情報を適切なタイミングで提供するスタイルにいち早くシフトできるかが鍵だ。
グローバル・国内サプライチェーンの強化も欠かせないだろう。
一方で、非ヘルスケア企業への参入機会が生まれている。元来、参入障壁の高いヘルスケア産業だが、今後起きうる第2波・第3波そしてその他パンデミックに向けて、既存プレーヤーのみでは生産が追い付かないシナリオもある。
そこで、日本を含め各国は、異業種参入を促す規制対応を行っており、様々な新規プレーヤーの参入が見受けられる。
例えば、英国では家電メーカーのdysonがわずか30日間で人工呼吸器「CoVent」を開発し、政府から1万台受注した。英国における人工呼吸器の必要台数が減少し、CoVentは不要となったが、このようなスピーディーな対応を強みとすることで、揺れ動く需要機会を獲得することができる。
ほかにも、オンライン診療患者向けのオンライン服薬指導は2020年9月から施行される予定だったが、新型コロナ対策の一環として、電話等による服薬指導の時限的緩和措置が打ち出された。
この変化により、処方薬デリバリーにおけるロジスティクス関連企業への機会が生まれている。適切な服薬に向け、調剤薬局、製薬卸、ロジスティクス企業の連携が必要なタイミングを迎えている。
新型コロナウイルスはヘルスケアにおいて不可逆的な変化をもたらしている。伝統的なヘルスケア企業だけでなく非ヘルスケア企業においても、これらの変化にいち早く対応することが急務である。
※マッキンゼーでは、COVID-19について最新情報を発信している。さらなる情報については「知見」「COVID-19:ビジネスへの意味合い」をご覧いただきたい。