●より多くのデータを使う権利を勝ち取る
マーケターは、データを意思決定にどう活かすかについて明確な戦略を持たないまま、大量のデータを集めることに膨大な時間を費やしている場合が多い。これは精神的疲労を招き、思い込みに基づく意思決定へと戻ってしまう傾向にもつながる。
筆者らの調査では、マーケターの約3割(31%)が、広告効果の最適化に際して「分析すべきデータが多すぎる」という課題に直面していると答えた。その作業に忙殺されているのだ。
あるべき状態に戻るには、十分な情報にもとづくビジネス判断をするために必要な、最もシンプルなデータセットから最初に手をつけ、「データ、インサイト、アクション」の好ましいフィードバックループを築くことだ。
一つの好例はアトリビューション・モデリングである。適切なアトリビューション・モデルの構築に必要なリソースを得るのは、往々にして難しい。
そこで筆者がマーケターにお勧めしたいのは、まず小さく始めて、小さな成果を重ねることで、ビジネスへのインパクトを立証することだ。そのうえで、新たなデータソースを取り込む必要性をしっかり主張すればよい。
●「デジタル」データを再定義する
デジタルの定義は拡大している。ゆえにデジタルデータに関するマーケターの理解の幅も、広がるべきである。
消費者はグーグルの検索結果をクリックし、インスタグラムをスクロールしながらも、依然としてブランド側とのメールや電話、テキストメッセージやチャットも行っている。不確実な時期には特に、消費者は直接的なコミュニケーションを重視するものだ。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、多くのマーケターはキャンペーン予算の削減やイベントの中止を決め、代わりに顧客とのコミュニケーションとコミュニティの構築に注力している。
顧客とのやり取りの場がオンラインかオフラインか、モバイルか、そのすべてかにかかわらず、そこからデジタルデータは生じる。
IoT(モノのインターネット)のプラットフォームは企業に対し、自社サービスの利用状況を可視化する。たとえば、ネットプロバイダー企業に対してはネットの利用データ、保険会社に対しては車の総走行距離などだ。企業はこうした利用パターンを知ることで、顧客が料金相応のサービスを利用して、適切な価値を享受しているかどうかを把握しやすくなる。
コンタクトセンターでの会話や、店舗への訪問も「デジタル化」されており、販売時点での購買行動に関するインサイトをもたらす。以前には追跡できなかった行動が、いまでは測定可能なのだ。
店内での購入も、電話での顧客との会話も、かつては「オフライン」であり、データのブラックホールとされてきた。正確な追跡ができず、そこでの売上げと、事前のオンライン行動やマーケティング・広告施策との因果関係を特定する手段がなかったからだ。
だが、マーケティングのテクノロジーが発展し、こうしたオフラインデータはいまやデジタルになった。したがって、他のあらゆるオンラインのアクティビティと同じように分析すべきである。
多くの企業にとって、これらのデータは意思決定において不可欠であり、競争、顧客、市場の現実が急速に進展する状況では、なおさら欠かせない。