有意義な行動をとる

 ここまでリーダーが避けるべき行動を挙げてきたが、今度は、有意義なアクションの枠組みを語ろう。

 リーダーは、物理的かつ心理的安全性を提供するだけでなく、変化を導くパワーとプラットフォームを活用しなければならない。トップが声明を出すことは重要だが、それは手始めにすぎない。

 組織のどのレベルの人間であっても、小さな行動によってもっと思いやりを示し、黒人従業員をはじめ軽んじられている人に必要なサポートを提供し、人種的な正義を推進する行動を率先してとることができる。マネジャーは、これらの問題に関して、従業員とつながりを持つ重要な役割を担っている。

 そこで、そのための方法を示そう。

 ●認める

 黒人をはじめとする非白人の同僚が経験してきた苦しみを、認めることが重要だ。これは、人種差別について、生涯にわたり学び続けると約束することでもある。人種差別的な出来事や、マイノリティの同僚が会社内外で経験してきた可能性が高い攻撃について、事実を知ろう。次のような手順を踏むとよいだろう。

・リサーチをする。信頼できる情報源からデータを得て、差別的な出来事を完全に理解する努力をしよう。ソーシャルメディアの枠にとどまらない調査をしよう。

・黒人をはじめとする非白人従業員が、怒ったり、恐怖を感じたり、幻滅したり、場合によっては仕事を離れることができる余地を与えよう。

・HR部門、あるいはダイバーシティ・インクルージョン部門のサポートを得る。書籍や論文も良質なリソースになるだろう。お勧めは、筆者らが寄稿し編集もしているRace, Work and Leadership(未訳)と、ハーバード・ビジネス・レビューの関連論文集Toward a Racially Just Workplace(未訳)、ドリー・チュー著The Person You Mean to Be(未訳)、そしてイブラム X. ケンディ著How to Be Anti-Racist(未訳)だ。スミソニアン国立アフリカ系米国人歴史文化博物館のポータルサイト「Talking about Race」といった無料のリソースもある。

・黒人をはじめとする非白人の苦しみや怒りを正当化したり、「肌の色は関係がない」というレトリックを改めたりするうえで、これら非白人従業員に教師役を押し付けないこと。

・黒人をはじめとする非白人のリーダーや従業員に、同僚を慰める役割や、率先して正義を推進する役割を依頼しないこと。

 組織上、リーダーであるあなたには環境を整える権限がある。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOと、同社のダイバーシティ・イニシアティブのトップを務めるブライアン・ラムは、米国内の従業員に次のようなメッセージを送っている。

「今週ミネアポリスで起きた悲惨な出来事は、全米で起きている実に多くの出来事と合わせて、悲劇的で悲痛なものだ。そこで、明確にしておきたい――私たちは注視しているし、耳を澄ませている。また、場所や形式を問わず、人種差別などの差別全般と戦う決意であることを、みなさんがた一人ひとりに知っておいてほしい」

 ジョージタウン大学では、ジョン・デジョイア学長が、学生や教職員のコミュニティに心のこもったメッセージを送った。

「私たちは長年にわたり、米国の人種差別と憎悪がもたらす悲惨なインパクトに取り組んできたが、その間にも、本学のコミュニティにメッセージを送るべき事件が、あまりにもたくさん起きてきた。2014年8月、ミズーリ州ファーガソンでマイケル・ブラウンが殺されたとき、2015年12月に、ニューヨーク州スタテンアイランドでエリック・ガーナーが殺された事件について、大陪審が(白人警察官を不起訴とする)決定を下したとき、2017年8月に、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者とネオナチの行進があったとき。これらの事件は、人種差別と暴力の全容を到底示すものではないが、そのたびに私は、私たちがなすべき仕事を、大学のミッションとパーパスの一部に位置づけようとしてきた」

 ●確認する

 人々はリーダーが、自分たちの安全や自分らしくある権利を認めてくれること、そして自分たちが守られていると感じられることを求めている。大統領や州知事、市長、保安官がそれをやらないなら、企業や大学、NGOのリーダーがやればいい。これはリアクションを示し、反省し、会話を持ち、成長し、発展し、インパクトを与え、進歩を遂げる継続的チャンスを与えるということだ。

 確認のプロセスは、従業員が自分の気持ちを打ち明けられるスペースづくりから始めることができる。たとえば、「今日の調子はどう?」と聞かれると、非白人従業員の多くは、本心ではなく、型通りの答えをするだろう。したがって、従業員の本音を引き出すような質問の方法を考えよう。

 たとえば、こんな声のかけ方ができるだろう。「このところ人種差別がこの国に与える悪影響について考えていたんだ。最近あんな事件もあったしね」。そのうえで、あなた自身の感想と懸念を説明して、約束をする。「私は、もっと平等な環境づくりをしたい。そこで、また同じような悲劇が起きるのを防ぐために、こういうことをやりたいと思っているんだ」

 さらに意図を説明して、それに取り組みたいという姿勢を示そう。「ほかにもこの運動をサポートするために私にできることがあったら、どうか教えてほしい。いま起きていることについて話すだけでもいい。君が話したくないと思ったとしても理解できるし、それを不快に思ったりしない。ただ、ドアはいつも開いていること、そして私が気にかけていることを覚えておいてほしい」

 この最後の部分は重要だ。職場で人種問題について話すことに、誰もが前向きなわけではないし、居心地の悪さを感じる人もいるだろう。相手としっかりした信頼関係がなければ、なおさらだ。

 ●行動する

 あなたはリーダーとして、変化を起こすパワーがある。そのパワーをどう使うべきかを、批判的に考えてみよう。理解と励ましの言葉は従業員の心に響くが、リーダーと組織がアクションを起こせば、もっと恒久的なインパクトをもたらすことができる。

 最近も、リーダーが勇気ある措置を取った例があった。ミネソタ大学のジョアン・ガベル学長は、ジョージ・フロイドの死後、ミネアポリス市警との契約を打ち切った。投資会社のフランクリン・テンプルトン・インベストメンツは、バードウォッチングをしていた黒人男性にハラスメントを働いた社員エイミー・クーパーを解雇した。

 ジョージタウン大学のジョン・デジョイア学長は、メッセージで次のようにも言っている。「私たちが社会における役割を果たすためには、つまり、この世界の知識を得る方法論と学問により真実を追求するためには、エンゲージメントが必要だ。そこで本学では、人種的正義に対処する学究的コミットメントを加速させ、奴隷制度と本学のつながりといまも残る人種差別のレガシーに対処し、このレガシーを維持させている構造的側面を取り除こうとしてきた」

 ほかにも、ユーチューブは平等監視センター(the Center for Policing Equity)に100万ドルを寄付し、グロッシア(Glossier)は50万ドルを人種正義のための団体に、さらに50万ドルを黒人が経営するビューティーブランドに寄付したペロトン(Peloton)は、全国有色人種向上協会(NAACP)に50万ドルを寄付しただけでなく、会員に人種差別反対の声を上げ、その実践方法を学ぶよう呼びかけている。

 あなたとあなたの会社は、社内で何ができるだろう。どのような措置が平等と正義を推進し、有意義な変化をもたらすだろう。あなたはリーダーとして(レベルは問わない)、こうしたアクションをどのようにサポートできるだろう。

 人種差別は黒人だけの問題ではない。社会構造を破壊するという意味で、あらゆる人の問題だ。従業員と会社全体がこのチャレンジを乗り越え、あらゆる人にとってよりよい世界をつくるために、あらゆるレベルのリーダーが、自分のパワーとプラットフォームとリソースを駆使しなければならないのだ。


HBR.org原文:U.S. Businesses Must Take Meaningful Action Against Racism, June 01, 2020.


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