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多数派を敵に回すような決断や、過去に前例のない行動を起こすには、勇気が必要だ。自分を信じて勇敢な決断を下せるか否かは、生まれながらの性質によるところも大きいが、後天的に育てることもできる。本稿では、そのための6つのテクニックを紹介する。


 最近、大手総合メーカーのCEOを務める元教え子がメールをくれた。「このパンデミックは、経営陣が本当に社員のことを思っていると示す機会になった」というのだ。

 だから彼は、業績に深刻な影響を与え、主要株主が反対したにもかかわらず、社員を一人も帰休させないことに決めた。また、経営幹部に株式を交付するので、報酬カットに応じることを求めた(のちに会社がその株を発行価格で買い戻すという条件だ)。

 さらに、経営難に陥っている全サプライヤーに信用供与を申し出たほか、経営幹部の支持を得て、本社の近隣にある病院のために個人防護具を空輸する手配をした。そのために、経営幹部が従業員のサポートを得て多額の寄付を募ったことを、彼はとても誇りにしていた。

 危機の当初は「まったく異なる方針を取るつもり」だったが、「正しいことをやる勇気を見つけた」と言う。そして、「これらの措置を受けた社員たちの行動には、実に頭が下がる思いだ」とメールを締めくくっていた。

 筆者はこのメールに感動した。比較的臆病で、どちらかといえば心配性だったCEOが、多くの株主が反対する行動を取る勇気を奮い起こしたのだ。この状況で何をするのが正しいのかを慎重に考え、反対と困難に直面しながらも、勇気を出して、自分が出した結論にもとづく行動をとった。

 だが、彼に勇気を奮い起こさせたものは何だったのか。生まれつき勇敢だったのか、それとも勇敢になることを学んだのか。これは難しい質問だ。というのも、性格と同じように、勇気は生まれながら持つものであると同時に、はぐくむことができるものであり、個人と社会の両方の産物であり、その人と状況の両方の産物だからだ。