エコシステム構築のインパクト

 これまで6つの潮流を紹介してきたが、この中で、企業が消費者、従業員、株主それぞれからの厳しい目を受けながら競争に勝ち、事業価値を継続的に上げていくためには、どうしたらよいだろうか。

 そこで鍵になるのが、エコシステムの構築である。

 エコシステムとは1993年にハーバート・ビジネス・レビューで初めて提言された概念であり、著者のジェームズ・ムーアは生き残っていく企業を「孤立状態ではなく、資金や協力者、サプライヤー、顧客を引き付け、協調のネットワークをつくり上げる企業」と表現している。

 そこで、マッキンゼーとしては、このエコシステムに着目して、新しい日本流のエコシステムを提唱したい。

 アリババや平安のような巨大な顧客基盤をもち、オンライン中心の中国企業が代表的なエコシステムとして語られることが多いが、日本においては別のアプローチもあるだろう。それがより地域に根ざしたオンデマンド・マイクロローカル型の経済圏をつくることである。

(6)で前述したように、マイクロローカルの経済圏では、よりオンデマンドの考えが主体になり、必要なものを、必要なタイミングで、必要な量だけ消費できる社会になるだろう。

 そこで生まれたエコシステムが発展することで、消費者ニーズを充足するだけでなく、デジタルを含めた素晴らしい顧客体験を提供し、サステイナビリティを含む社会課題解決に貢献する。

 例えば、食品廃棄ロスの解消や、地産地消による地域経済の活性化、高齢化社会の中で働き手の増加等が挙げられる。

 高齢化社会における社会コスト改革にもつながり、地域活性化・分散化社会の実現により個人の幸福度を高めることになるかもしれない。日本流のエコシステムが大きな社会インパクトをもたらす可能性を秘めているのだ。

 ただし、これらの実現は、企業1社でできる問題ではない。異業種とのパートナーシップが必須となり、さらには大胆な投資、アジャイルな事業開発、優秀な「個」を引き付ける人事モデルが必要である。

「自前主義」、「既存の事業モデルでの生産性向上を重視した縦割り型組織」、「年功序列型の人事システム」、「難しい意思決定やリスク回避傾向」を持った日本企業には、こうした要件は大きなハードルであるが、是非今後の成功事例に期待したい。

※マッキンゼーでは、COVID-19について最新情報を発信している。さらなる情報については「知見」「COVID-19:ビジネスへの意味合い」をご覧いただきたい。