アジャイル型組織が有効な4つの理由
コロナという外的要因がある今だからこそ、それを起爆剤として組織・人事変革を起こすべきではないか。以下にアジャイル型組織が日本企業にとって有効な4つの理由を挙げる。
(1)成果を重視した働き方を促進し、生産性向上につながる
在宅勤務が広がり、各個人の働きぶりが見えない中、その唯一の評価指標は、働く時間の多寡ではなく、実際に仕事の成果がでているのかどうかとなる。
アジャイル型組織では、特定の成果・目的を達成するためにチームが組成されるため、このような働き方の受け皿に適している。仕事が具体的に定義され、それぞれがその役割に責任を負うため、必要なリソースのみがかけられ、生産性の向上につながるからだ。
実際、マッキンゼーのこれまでのグローバル調査では、アジャイル型組織は従来型の組織に比べ、生産性が平均3割ほど上がるとされる。この実現には、個人に期待される仕事の定義も、人事評価の方法も変わる必要があるのだ。
(2)権限委譲を促し、現場のオーナーシップを醸成できる
一般的な日本組織では、意思決定のために現場から順に根回し・稟議が繰り返されるが、それには膨大な工数と時間がかかる。
トップマネジメントが方向性を示したうえで、チームに説明責任を持たせるアジャイル型の組織では、意思決定までの時間が短縮するだけでなく、社員への権限委譲を促すため、現場のオーナーシップがより醸成される。
これにより、自律的な意欲ある社員に変わっていく。これは21世紀の働き手にとって働き方における重要な要素であり、アジャイル型の導入で社員の満足度が20~30ポイント上がったという調査もある。
(3)「ワンチーム」で顧客ニーズに素早く対応できる
従来型の組織においては、部門間の組織の壁が厚く、どうしても横串連携に時間がかかってしまい、時に調整に無理が生じる。
アジャイル型の組織では、初めから目的達成のために必要な能力を備えた人がチームを組成して「ワンチーム」として活動するため、組織間の調整にかかる時間が必要ない。
これが顧客ニーズへの対応スピードを上げて、顧客満足度向上にもつながっている。ある欧州企業では、アジャイル型組織を導入することでネット・プロモーター・スコア(顧客推奨度)を3か月で30ポイント上げた事例がある。
(4)完璧・リスク回避を求める組織文化が変わる
終身雇用の続く日本の従来型組織においては、ピラミッド形の官僚型組織のために、1度の過ちがキャリアを潰しかねない状況にある。その中では、常に完璧を求め、リスクを最小化するよう保守的になってしまう。
しかしながら、フィードバックを基に改善を続けていくアジャイル型の組織は、失敗こそが奨励される。仮説・検証の試行を高速で繰り返すことで、従来にない開発スピードを実現できるからだ。
イノベーションのスピードを10倍にするという観測もあり、コロナを含め、世の中の状況に不確定要素が多い場合には、有利に働く可能性が高い。
結果として、完璧・リスク回避を求める組織文化を、試行して学ぶ風土へと変えられるのだ。
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以前から日本の組織の強みと言われてきた、チームワークの良さや、ボトムアップで常に改善点を求める姿勢というのは、実はアジャイル型組織でも重要な基盤となりうる。
今後、労働人口の減少・高齢化が一層進み、若年層への会社に対する考え方が変わる中、このようなアジャイル型組織を実践できる企業は、より魅力的になって優秀な人材を獲得し、適所に配置することが考えられる。
もはや海外の話ではない。最近アジャイル型組織を導入した日本のある製薬会社の社長が「アジャイルのおかげでこの危機への対応がより柔軟にすることができた」と言っていた。
この危機を乗り越える中で、組織を「アジャイル型」に変えることでより一層、日本企業の生産性、競争力を向上するためのきっかけとなるのではないだろうか。
※マッキンゼーでは、COVID-19について最新情報を発信している。さらなる情報については「知見」「COVID-19:ビジネスへの意味合い」をご覧いただきたい。