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デジタルトランスフォーメーションを推進する際、テクノロジーの優劣ばかりに目が向いてしまい、人と向き合うことを忘れてはいないだろうか。どれほど優れた技術を採用したところで、従業員や顧客を犠牲にするような取り組みは、思うように成果が上がらないどころか、悪い結果をもたらしかねない。本稿では、従業員エンゲージメントと顧客満足を重視しながら効率性を上げる4つの方法を示す。


 顧客と同僚に敬意を持って接するべきであることは、誰もが理解している。そして、デジタル技術がその妨げとなりうることも、周知の事実である。「片付けるべき用事(job to be done)」が何であれ、それがデジタル化されると、主要なコミュニケーションはより間接的で、非人間的なものになりがちだ。

 これは避けようがない。かつて人がやっていた仕事の多くを、いまではアプリや、その他のテクノロジーが遂行している。そして、アプリを訓練して共感を持たせることは不可能だ。エンジニアがワークフローを再設計する際、ユーザー体験よりも効率性を最適化しがちであることも、人間味の喪失を助長している。

 これは一筋縄ではいかない問題だ。デジタルトランスフォーメーションの時間を巻き戻すことなど、もちろん不可能であり、望ましくもない。そして、業務プロセスの再設計において人間味が失われないようにすることは、必ずしも簡単ではない。

 とはいえ、自社の業務プロセスに感情的知性が内在していなければ、効率性を高めても無駄であることを肝に銘じるには、いまこそ好機である。

 新型コロナウイルス感染症(Covid-19)によって、従業員と顧客は途方もなくストレスに満ちた状況で働いている。多くは隔離状態にあり、仕事では新しいテクノロジーの使用を急に迫られている。自分の職、健康、愛する人々のことも心配であろう。

 リーダーは、従業員の賢明かつ懸命な働きをかつてなく必要としており、顧客の忍耐と忠誠心も求めている。だが、自分は大事にされている、敬意を払われ耳を傾けてもらっている――そう彼らが実感しない限り、どれ一つ実現しないのだ。

 業務プロセスをアップデートしながら、人間の体験にもしっかり重きを置き続けるための、良識的な方法が幸いにもある。