人は通常、1日に約18回笑う。そして、その97%は誰かと一緒に笑っている。私たちは一人で笑うよりも他の人と一緒に笑うほうが30倍も多いのだ。
考えてみてほしい。あなたが最後に一人で面白いことを考え、大声で笑ったのはいつだろう。さらに、あなたと友人が何かについて笑うとき、実際に面白いのはどれくらいの頻度だろうか。驚くかもしれないが、研究によると、人が笑うことの80%は、実際にはそれほど面白くないという。
では、なぜ人は笑うのだろうか。それは、他の人が笑うからだ。人と一緒に笑うために笑うのである。
誰かがあくびをすると皆があくびをするように、周りの人が笑うと、たいていの人は笑わずにはいられない。テレビのコメディ番組が録音した笑い声を流すのもそのためだ。
他人の笑いにつられて笑うことは、単なる行動現象ではない。笑うことで、私たちの体は2つの重要な化学物質を放出する。
1つが、下垂体から分泌されるエンドルフィンで、血液を介して脳や脊髄に運ばれる。ポリペプチドであるエンドルフィンは、脳内のオピオイド受容体と結合して痛みを和らげ、幸福感を引き起こす。実際、人は事前に数分間笑うだけで15%多くの痛みに耐えられることが研究でわかっている。
もう1つ、笑うと脳から放出されるのがドーパミンで、これは多幸感を生む神経伝達物質だ。ドーパミンは学習、意欲、注意力を向上させる。笑いと、それに関与する神経化学物質がもたらす健康上の効果には、免疫機能の改善、ストレスの軽減、痛みに対する耐性の増加、心血管系の健康改善、不安の軽減、安心感、気分の改善などがある。
笑いは仕事のモチベーションや生産性の向上にもつながる。では、新型コロナウイルスの話に戻ろう。
パンデミックに対処するために私たちがみずから課した隔離措置は、社会的交流を著しく抑制し、笑いを減らし、その結果、体が必要とする有益な化学物質を減少させている。
さらに悪いことに、私たちが一人で経験しているストレスや恐怖は、体内の化学物質を誤った方向に向かわせる。
脅威や危険、ストレスにさらされると、私たちの体はコルチゾール(腎臓の上にある副腎で作られるグルココルチコイドホルモン)を血液中に放出する。体内のほとんどの細胞にコルチゾール受容体があるため、その作用は広範囲に及ぶ。そしてコルチゾールが過剰になると、体重増加、頭痛、神経過敏、疲労、集中力の低下、高血圧などが起きる可能性がある。
それでは、こうした影響を緩和するためにチームリーダーとしてできることは何か。