(1)待つ余裕はあるか

 これは純粋に経済的な質問だ。今回は失業手当が手厚くなったため、一時帰休を言い渡された米国人は平均して時給24ドルを4ヵ月間受給できる。しかし、これは多くの人々にとって生活を支えるには不十分な金額だし、期間限定という点も懸念事項である。

 一時帰休は最長で6ヵ月間続く可能性がある。会社には従業員を呼び戻すかどうかを6ヵ月以内に決める義務があるからだ。つまり一時帰休の期間次第では、経済的なリスクにさらされる。しかも、コロナ危機が過ぎても従業員が呼び戻されないリスクもあるし、いまのこの危機の最中では存在した新たな雇用の機会を失うおそれもある。

 待つ余裕のない人たちには、よい選択肢がある。正社員または臨時雇用の形態で、いまとは違う職に応募して、学びながら稼ぐことができるのだ。

 失業手当の申請者数は確かに記録的だが、全米の求人総数はマンパワーグループのリアルタイムのデータによると、5月7日時点で580万件あった。すなわち、新たなキャリアパスを選ぶ決心がつかなくても、臨時の仕事で事前に新しいキャリアのトライアルをしてみることが可能となる。

(2)待ちたいか

 一時帰休という言葉にはいろいろな含みがあるが、「恐怖」をその主な特徴にする必要はない。これは新たな未来の始まりかもしれないのだ。

 我々の多くがキャリアの常態とルーチンの罠に囚われていて、自分の興味や人生の目的について再検討することを忘れている。今回の危機によって、みずからの将来をこれまでになかった方法で再評価する時間が与えられたのだ。

 我々はいま、立ち止まって考えることを迫られている。これは本当に自分が望む道だろうか。自分はこの仕事を愛していて、またやりたいのだろうか。あるいは、何か新しい挑戦を考える時期だろうか。

 この機に、しばし熟考する時間をつくろう。自分の潜在能力について、かつての平常時の生活ではできなかった方法で心に描き直してみるといい。

 自分の仕事には、待つ価値があるだろうかと自問してみる。危機以前の生活に本当に戻りたいのか。少しでも疑問を感じるなら、何か別の仕事に応募してみて、異なる未来として何が実現できそうか、様子を見てみよう。それによるマイナス点は、何もない。

(3)新たに得るものは、残ったものより価値が高いか

 キャリアの選択肢を考える場合に、「隣の芝生は青い」というお馴染みの概念が真実であるケースは少なくない。考慮中の仕事の利点と欠点を分析することが、十分な情報に基づいて選択するうえで重要な役割を果たす。

 一時帰休中の職にはどんな楽しみや恩恵があるのかを、いま一度、新鮮な気持ちで見てみよう。給与や健康保険といった必須事項から、苦労して築き上げた評判といった個人的な事柄に至るまで洗い出すのだ。これらの要素すべてに価値がある。

 その後、別の組織で新たな職に就いて得られるであろうものと比較してみる。自分が望む柔軟性はあるか。学ぶ機会はあるか。そしておそらく最も重要なこととして、呼び戻されるのを待っている職と比較したとき、新しい仕事に対する将来の需要はあるか。

 比較する際に忘れてならないのは、どんなときにもトレードオフがあることだ(たとえば、仕事内容はより面白いが給与は低い、報酬は高いが自由はない、世間的な評価は高いが意義は薄い、など)。それでも追求する価値があるか、自分の根本的な価値観に合うかを見極めよう。

 そして決断を下す前に、現在はまさに自分のキャリアについて雇用主と話し合う、絶好のタイミングでもある。雇用主とみずからの双方にとってうまくいくように、キャリアを再構築する方法があるのかを確かめてみよう。あなたがほかの事業に挑戦することを応援してくれるかもしれないし、あなたの都合に合わせてスケジュールの変更を取り計らってくれるかもしれない。

 聞きたかったものの、以前は気後れして聞けなかったことについて尋ねてみよう。これらを考慮したうえで転職を目指すと決めた場合には、得られる限りの情報を最大限に活用して進めることになる。