転職にまつわる問題

 アメリカ労働統計局のデータによると、ベビー・ブーマーは平均して10回転職するという。1990年代に広まった、「労働者はフリー・エージェントである」という考え方は現実となり、経済情勢に左右されることなく定着している。

 その結果、自分のキャリアは自分でしっかりと管理することが我々全員の責任になった。企業の出世コースもいまだ解体中であり、CEOの座に着いたとしても、それが終点とはいえない。我々がインタビューしたある個人投資家が語ったように、「(キャリアとは)終点のない、絶え間なく発展するプロセス」なのである。

 転職はほぼ不可避といえるが、容易に運ぶことは稀だ。必ずと言ってよいほど、転職者は感情的に揺れ動き、その業績は長期的にも短期的にも著しく低下することが多い。たとえば、我々が以前行った研究では、投資銀行に転職した花形の証券アナリストたちは転職後に業績が低迷し、それが5年も続いたことが判明した[注]