(1)小さな行動を通して力をつける
自分にはどうしようもできない大きな物事に囚われてしまうと、精神的ウェルビーイングを損なう。その代わりに、どれほど些細なことでも、自分のコントロール下にある部分を見つけて、行動してみよう。
そうすることで自分も役に立てるという気持ちが湧き、より意義ある目標に向かいやすくなる。自分や同僚、コミュニティのために、状況を改善するために何ができるかを考えやすくなるのだ。
9.11が発生したとき、マンハッタンに住むニコール・ブラックマンは、街の人たちと同様に何をしたらよいかがわからなかった。救助の専門家でもなければ、危機管理組織で働いてもいない。それでも何でもいいから手伝わなければと思い、グラウンド・ゼロで仕事にあたっていた救助隊員にサンドウィッチの差し入れを始めた。
そこからは早かった。サンドウィッチを届けた後、ボランティアの受付場所にしばらく居残った。そして運営責任者が帰ると、ブラックマンがそのあとを引き継ぐことになった。
数週間後には、スタッフが役職を持ち、分業制で広範な任務を果たす、数百人規模の臨時ボランティア組織のリーダーを務めていたと、デイモン・ディマーコによるオーラルヒストリーTower Stories(未訳)の中で彼女は振り返っている。地域の政府機関からでさえ、赤十字のように由緒ある非営利団体だと思われたそうだ。
ブラックマンは、自分のアパートに閉じ籠り、どうしたら世の中を変えられるだろうかと思案することはなかった。そうではなく行動し、その結果として活動の運営者とつながり、救助隊員が何を必要としているかを理解し、それが人助けになったのだ。
大切なのは、「とにかく動き出そう」という発想である。いくつか違うことをやってみて反応を探ろう。「目的が行動を決める」と考えがちだが、逆もまた然りである。小さな行動を通して得たフィードバックを活かして、より意義深い目標や目的を見つけることができる。