(2)自分ならではのスキルを危機の課題解決にどう活かせるかを考える
自分の強み、関心、やりがいに合わせて仕事を自発的にリデザインする、「ジョブ・クラフティング」を実行する社員が増えている。エール大学のエイミー・レズネフスキー教授によれば、自分の仕事に対する見方を見直すことも、このアプローチの一つだという。
たとえば9.11のあと、金融機関の多くの社員が自分の仕事に価値を見出せなくなった一方で、新たなパーパスを見出した人もいた。会社を存続させることが、テロに屈せず、国家を経済的損害から立ち直らせ、命を落とした同僚に敬意を表する方法の一つである、と。
ある銀行員は、ディマーコのインタビューにこう答えている。「私は医師ではないので、病院に飛んでいって人を助けることはできなかった。建設作業員でもないので、瓦礫を掘ることもできなかった。献血をしようとしたが、4時間待ちの行列ができていた。(中略)自分の戦い方は、この会社を存続させていくことだ」
現在の危機においても同様に、自分たちの事業を持続させることだけで、パンデミックによって起こりうる不況と戦っている。従業員は給料で家族を養うことができ、取引先も同じように助けられているのだ。
だが、それだけでなく、自分の仕事を通して、コミュニティが抱える問題の解決に貢献できるような工夫をすることもできる。
まず、自分のスキルやリソースをリストアップして、それらを活用する方法を創造的に考える。投資の専門家であれば、わずかな時間であっても、困っている経営者や職を失った人たちに金銭面でのアドバイスを提供できるだろう。建築士は、オフィスやレストラン、学校などのウイルス対策を一緒に考えてみよう。マーケティングが得意な人は、重要なサービスを提供する非営利団体の資金集めを手伝ってはどうだろうか。
コロナ危機では、さまざまな属性の人たちが被害を受けているので、力を貸す方法も無数にある。また、他の人たちと連携すると影響力が大きくなる。これでもまだアイデアが浮かばない人は、最近よく見られるようになったハッカソンへの参加をお勧めする。被害を受けた人たちを助けるべく、多様なチームがその方法を生み出そうとしている。
シスコでサービス部門の営業マネジャーを務めるサムリ・コッキは、パンデミックが起きたことで、顧客と直接合うことが必要な仕事に就く友人や知人が経済的に困っていることを知った。
コッキは仕事柄、デジタル会議システムに詳しかった。そこで、勤務時間中の一部と自分の時間の一部を使い、数社のデジタル化を指南した。たとえば、不動産会社が売家をリモートで掲載して販売できるサービスのデザインと構築を手伝ったり、子どもたちが自宅にいても教室を続けられるように、子ども向け美術学校のリモート運営に力を貸したりしたのだ。