(3)危機をパーパスに満ちた未来とつなげる機会に変える

 窮地に立たされている人が仕事の意義や価値を高めるために、いまできることはそれほどないかもしれない。レイオフ(一時解雇)された人、生活がぎりぎりで他のことを考える余裕がない人もいるだろう。

 それでも未来に目を向ければ、意義を見出すことができる。頭の中でタイムトラベルができる能力は、動物界の中でも人間だけだ。人は「いま」を経験するだけでなく、過去を追体験し、未来を思い描くことができる。

 ノースウェスタン大学ケロッグスクール・オブ・マネジメントのアダム・ウェイツのグループが行った調査によれば、人がこの能力を発揮すると、より強く生きがいを感じられるという。危機は、受け身で過ごしてきた人生に待ったをかけ、本当に大切なことに気づかせてくれるのだ。

 危機を迎えると、人生を最も大きく変えるような気づきを得やすい。自分が仕事を通して得たいと思っているものを実際に得るためには、方向転換が必要だと気づかされる。10年後に、「この危機がきっかけで、より意義ある生き方をするようになった」と振り返る人が大勢いるだろう。

 そのことを念頭に置き、10年後にやっていたい理想の仕事を考えてみよう。それを一つだけではなく、いくつか想像すること。次に、そこに至った道のりを遡ってイメージしよう。同時に、いま棚上げされているプロジェクトや休眠中の情熱が向かう先を想像しよう。

 2001年、成長著しかったジェレミー・バウマンの通信会社は、グラウンド・ゼロからわずか5ブロックの距離にあった。9.11の影響で顧客を失い、翌春、廃業せざるをえなかった。

 その半年はストレスの多い時期だったが、あとになって考えれば運がよかったとバウマンは言う。「9.11をきっかけに、自分がこれから地球上でどんな時間を過ごそうか、どうやって社会に貢献しようかと考えるようになった。ただお金のためにインターネット接続サービスを販売することをやめて」と、Life is Too Short(未訳)の著者、ウェンディ・ヒーリーに話している。

 バウマンはそのように考えて、ルーテル・ソーシャル・サービスの資金調達の仕事に就き、そこでいまの妻に出会った。その後、社会起業家となり、服役中や服役を終えた男女に対して、起業や就職、性格形成のトレーニングを提供する非営利組織RISEを設立した。危機をきっかけとした自省を通して、「自分のことを理解し、仕事と人生に意義を見出した」という。

 危機のときにパーパスを見つけることで、一時的なその状況に耐えられるようになる。そうした状況は自分で選んだわけではないが、それとどう折り合っていくかは選ぶことができる。

 小さなアクションから始めて、自分のスキルを最大限に活用する方法を見極めよう。たった1歩か2歩の前進は、現在の社会貢献につながるだけでなく、より意義ある未来にたどり着くための始まりでもあるのだ。


HBR.org原文:What to Do When Work Feels Meaningless, June 03, 2020.


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