●「自己のポートフォリオ」から引き出す
アリゾナ州立大学のアイデンティティの第一人者、ブレイク・アシュフォースは、著書Role Transitions in Organizational Life(未訳)の中で、私たちの自己認識の大部分は、他人が自分をどう認識しているかに基づいていると指摘する。フィードバックや称賛が少ないことが多くの人に困難をもたらすのは、そのためだ。
「あなたのクリエイティブな意見をとても評価している」とか、「あなたがいなければこのピッチは成功しなかった!」などと言われることがないと、自分が何者で、どんな価値をもたらすことができるのかと疑問を持つ。「チームからフィードバックが十分得られずに、本当にチームの一員と言えるのか?」と考えてしまうかもしれない。
私たちは同僚、上司、友人、子どもなど、自分が関わっている人のそれぞれに対して、異なる「自己」が現れる。アシュフォースは「特定の役割は特定の自己を呼び起こす。個人とは実際には、自己のポートフォリオなのだ」と書く。この自己のポートフォリオによって、ある瞬間に気分が良くなったり、特定の困難や厄介な状況に立ち向かったりするのに必要な人間になることができる。
著述家でペンシルバニア大学ウォートン・スクール教授のアダム・グラントは自身のポッドキャスト「ワークライフ」で、「対処戦略の一つは、自分は複数のアイデンティティを持っていると考えることだ」と主張する。
「チームプレーヤー」としてのあなたについて、いまは上司からフィードバックがないかもしれない。しかし、周りの人たちに対して前向きで役に立ち、貢献しているすべての「自分」を考えることによって、自信を高めることができる。
たとえば、上司から注目されていないと感じるなど、チームプレーヤーとしての自分に不安を感じている場合も、周囲の人に前向きで役に立ち、貢献しているすべての「自分」を考えると自信がつく。
あなたを評価している人を少なくとも5人思い浮かべてほしい。彼らの名前と、彼らがあなたをどう見ているかを書き留めよう。「同僚のウェンディは、私を信頼できるアドバイザーとして見ている」「クライアントのサムは、私を戦略的な思考の持ち主と見ている」などだ。