スウェーデンでは、民間企業と公共部門の組織からなるコンソーシアムが、その困難な移行を数週間で実現した。コンソーシアムに参加するスカンジナビア航空のオスカル・ステーゲ・ウンガー取締役は、この取り組みが生まれた経緯をこう説明する。
「3月14日に臨時の取締役会を開き、客室乗務員の90%を一時解雇することを決定した。(中略)大きな決断だった。議論を重ね、仕事がほぼ何もない人が大勢出ると同時に、医療システムにおいて莫大なニーズが生じると考えた。戦時とさほど変わらない状況だった。
私は失業者の再教育に携わったことがあり、看護師や医師をサポートするための短期間の訓練プログラムを構築し、彼らが最も重要なことに携われるようにできると考えた」
ステーゲ・ウンガーはその後、強固に連結するスウェーデンのビジネスエコシステムを頼り、人材サービス会社ノヴァーレ・ヒューマン・キャピタルのフレドリク・ヒレルソンCEOに相談した。そして、ヒレルソンはソフィアヘメット大学のヨハンナ・アダミ学長に連絡を取った。
彼らはすぐに、看護助手を目指す3日半の訓練プログラムをつくることを決め、スカンジナビア航空の客室乗務員約1100人にプログラムを紹介した。客室乗務員はすでに基本的な医療訓練を受けており、業務の一貫として困難な状況にある人々に対処した経験も持っていた。
そこには数百人が申し込み、試験プログラムに30人が選出された。レイオフから、わずか2週間後のことだ。
以来、客室乗務員と同等のトレーニング経験を持つ他業界の人材300人がこのプログラムの訓練を受け、現在、国内の医療機関で働いている。プロジェクトはその後、高齢者介護の分野にも拡大され、ストックホルム・グランドホテル、コートヤード・バイ・マリオット、マクドナルドなどの企業からレイオフされた200人が訓練を受けた。
取り組みの第一段階が終わると、新たなニーズが浮上した。スウェーデンでは、危機の最中も大半の学校が継続されていたが、多くの学校で多数の職員が自宅待機を余儀なくされていた。新型コロナウイルスに感染したからではなく、何らかの病気の症状が出た場合には自宅にとどまるよう要請されていたからだ。
これまでにさまざまな職種の60人が、授業計画、ハイレベルな教授法、日常的な学校生活などに関する3日間のファストトラック・コースを受講した。彼らは現在、ストックホルム各地の学校で管理部門のスタッフとして働き、働きすぎの教師たちが中核業務に集中できるよう支援している。
この取り組みは、新型コロナウイルスの危機後も継続するであろう、持続可能なアプローチへと発展している。試験プログラムの導入からわずか2ヵ月後、ソフィアヘメット大学では、この迅速な再教育プログラムが「基本」プログラムとして提供されることになった。