この全国的な再教育の取り組みは、いくつかの貴重な教訓を示した。

 ●パーパスの力

 関係者全員がパーパスの圧倒的な力について言及した。その力が彼らを団結させ、迅速かつ、しばしば型破りな方法で推進することを可能にした。

 アダミはこう話す。「こうしたことを実現するには、共有されたより高次のパーパスが重要であることを学んだ。他の組織、政治家、労働組合に働きかける際には、同じように手を差し伸べなければ見込みはない」

 ステーゲ・ウンガーも同様に、こう指摘する。「過去にも好例はあったが、過去には明白ではなかった、より高次パーパスを全員が確認できた。この力強いパーパスによって、既存のエコシステムが持つ最大の可能性を認識できた」

 ●エコシムテムの重要性

 この再教育の取り組みは複雑かつ包括的なため、個々の企業、業界、または政府部門が単独で実施することは不可能だった。互いを知り、信頼し合っている異なる分野の人々が「点をつなぐ」ことが必要だったのだ。

 ステーゲ・ウンガーは、強固に結びついた自国のエコシステムの重要性を十分認識していた。「スウェーデンは、企業、公共部門、学術界、そして特に政治家を超えて協力すれば、最も成功するという考えに基づいている」

 アダミは、次のように強調する。「まったく同じ価値観を共有する必要はないが、『どうやるか』の足並みが揃っている必要がある。そうでければ、進行が阻害されるか、完全に失敗することさえある」

 ●迅速なイノベーションを促す緊迫感

 昨今の危機は未曾有の課題を突きつけた一方で、システムを変えるまたとない機会をもたらした。行動を促すプレッシャーが、通常の状況下ではこうした大胆な取り組みの妨げになりうる官僚主義や厳しい労働規制、思考の制約を克服させた。

 ただし、その機会を認識し、捉えなければならなかった。エコシステムにいる人々が協力してそれを活かし、小規模な試みを迅速に進め、生じた課題に対処したのだ。ヒレルソンは、こう強調する。

「スウェーデンのシステムは速度が非常に遅くなる可能性があり、当局、組合、企業それぞれの利害によって行動が完全に阻害されるか、あるいは迅速に行動できないこともある。この特異な状況を前に、今回はそうならないことを私は望み、実際に望み通りになった。
 その後押しとなったのは、試験的な導入を迅速に行ったことだ。いっぺんに大規模に行うのではなく、小さく始めて、それ(再教育)が機能することを示し、次の機会によりよい方法で行う術を学んだ」