●迅速な再教育が持つ潜在的な可能性
再教育は一般的に、幅広い選択肢、研修、認定を必要とする長期のプロセスと考えられている。今回のスウェーデンの取り組みでは、通常よりもはるかに迅速に対応しつつ、以下の要件を満たす必要もあった。
(1)ニーズを明確に特定する。
(2)採用が可能で、要件に関連するスキルを持つ人材のカテゴリーを特定する。その一例が、基本的な医療訓練を受け、ストレスのかかる状況にある人々に対処する能力を持つ客室乗務員だ。
(3)どのスキルが不可欠で、迅速に教育できるかを判断する。時間的に厳しい制約があるため、各分野の典型的な訓練コースに含まれるすべての領域を、再教育で網羅することができないからだ。
(4)再教育を受けた人材に新しい仕事を割り当てる。
(5)人材が新たな仕事で進歩するうえで、質の基準が満たされ、調整されるようにする。
アダミは、この迅速なプロセスについてこう話す。「何よりも重要なことに、熱心で学習意欲がある人はほぼ誰でも、特定の仕事をするための再教育が可能であることがわかった」
ヒレルソンは、参加企業の決定的な重要性を強調する。「病院にスカンジナビア航空の従業員を雇用してもらうのは簡単だった。彼らは評判がよかった。ある程度の医療訓練を受けていて、時に困難な状況下で他人と協働する豊富な経験を持っているからだけでなく、同社が雇用主として強力なブランドだからでもある」
●外部からの設立資金の重要性
再教育を迅速に向上させ、概念実証(PoC)を構築するために、従業員を訓練し、マッチングのプロセスを促進する資金援助が初期に必要だった。この実験的取り組みに資金を提供することは、すでに危機そのものと闘っていた組織には困難だっただろう。
代わりに、マリアンネ・アンド・マルクス・ヴァレンベリ財団が、最初の人材の再教育と再配置のための初期資金を提供した。その後、目に見える利益が明らかになると、病院や学校は費用を回収できるようになった。
業界の垣根を越えて労働力を急速にシフトさせることへの社会のニーズは、差し迫った危機の影響で各業界が一変する中で、ますます重要になるだろう。
世界中の社会が、再教育プログラムを通じて、このシフトを加速させる方法について考えるべきだ。スウェーデンの試験的なプログラムは、規模は小さいものの、成功の可能性を示唆している。
HBR.org原文:How Reskilling Can Soften the Economic Blow of Covid-19, June 08, 2020
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