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新型コロナウイルス感染症のパンデミックで経済活動が停止し、多くの人が職を失った。その打撃は計り知れない。ただし、医療分野や教育機関のように需要が増加して、人手不足に陥っている業界もある。労働力の需給バランスを調整するには、人員削減の対象となる従業員を迅速に再教育して、働き手を必要とする業界にシフトさせることが有効だ。本稿では、スウェーデンの事例を参考に、それを実践するうえで役立つ教訓を示す。


 新型コロナウイルス感染症のパンデミックで業界全体が停止するなどして、2020年の最初の数ヵ月間に世界中で何百万人もの労働者がレイオフ(一時解雇)された。しかし、すべての業界が縮小したわけではない。たとえば、医療分野や一部地域の教育機関、オンライン小売業などでは需要が増加した。

 平時では、労働者はゆっくりとだが、異なる業界間を絶えず移動している。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、労働力の移動をより迅速に行う緊急の必要性が生じた。

 多くの政府は、レイオフされた労働者に対して、特例的な失業手当を支給することに焦点を当ててきた。だが、人材不足の業界への移行を促す目的で労働者をトレーニングし、勧誘するプログラムはほとんど実施されていない。

 たしかに、この方法は特効薬ではない。過去数ヵ月間で消費者の需要が激減して従業員の削減が避けられなくなり、失業者への支援が必要となった。それでも、危機的な時期に労働力の需要と供給のバランスを調整する好機を逃してしまった。それが実現できれば、多くの労働者がこうむる打撃を緩和できる可能性がある。

 この不均衡を是正するためには、不足しているスキルを速やかに評価し、レイオフされた従業員を迅速に再教育する仕組みが必要だ。現在の危機には、民間部門だけでも、政府機関だけでも対応することはできず、さまざまな部門のスピーディーかつ円滑な連携が求められる。

 こうしたアプローチの例といえるのが、スウェーデンの取り組みだ。