リーダーとして信頼できる存在だと証明することはとても重要だが、仕事で成功する基盤、すなわちチームのメンバー、顧客、クライアントとの人間関係を築いて維持するためには、それ以上に記憶力が重要になる。
忘れやすいことは、それらの絆を侵食する。相手の名前や肩書きを間違える、会議の約束を見落とす、詳細を忘れるといったことが、大きな裂け目につながりかねないのだ。実際、相手に忘れられたという感覚は、対人関係に重大なダメージを与えることがわかっている。
リーダーとって、記憶の欠落の影響はすぐに膨れ上がる。顧客やチームに関する詳細を忘れることは、相手に人として関心を持っていない、人間関係に投資していないというメッセージを発しているのだ。
その影響は、人々がリーダーに慰めと支援を求める危機的な状況では、特に大きい。彼らの個々の状況を記憶していれば、それに合わせてコミュニケーションを調整したり、期待する内容を変えたりできる。緊急時にそこまで対応するには、テクノロジー頼みでは限界があるだろう。
これはまさに、私自身が日々直面している課題だ。サザビーズ・インターナショナル・リアルティの社長兼CEOとして、人間関係を基盤としたビジネスを構築し維持していくために、記憶を引き出す力がカギを握る。不動産の世界で成功するには、相手が自分にとって大切な存在なのだと、明確に示すことが重要だ。
私は周りの人々に、自分が彼らを大切にしていて、彼らのことを覚えていると確実に伝えながら、世界72ヵ国1000ヵ所以上のオフィスでエージェントとの関係を維持してきた。新型コロナウイルスのパンデミックの前は、会社を維持するために記憶力が「必要」だったが、いまや「不可欠」なのだ。
私は長年の経験から、テクノロジーへの依存を減らしつつ、日常的に頼りになる強固でアクティブな記憶力を伸ばす戦略を発展させてきた。ビジネスリーダーも企業のCEOも、一般の社員も、このアプローチを使えば同じように記憶力を鍛えることができる。