●記憶に関するタスクのアウトソーシングは選択的に

 不動産の世界に入った頃は、遅くまで残業して電話に応対した。

 もちろん、誰かに頼むこともできた。しかし、私の学習スタイルを考えれば、定時で退社するより、自分で電話に出るほうが仕事の詳細を早く覚えられるだろうとわかっていたのだ。

 時間外も働くことによって、私の記憶力と連絡先リストは拡充した。このリストはいまも私の仕事を支えている。

 当初は巨大なローロデックス(回転式の卓上名刺ホルダー)をめくりながら、それぞれの人の情報を自分なりに整理して記憶していた。このような習慣は、すべての学習タイプの人に効果的だ。いまは連絡先リストがデジタル化されているだろうが、新しい情報を得たら、自分でスマホや顧客情報管理ツールに入力すること。

 一見すると面倒な作業で、誰かに任せたくなるかもしれない。ほかにやるべきことがたくさんあるときは、特にそうだろう。

 しかし、学習能力を見くびってはいけない。自分で情報を入力しながら、それぞれの人といつ、どこで会ったかを考える。この習慣は、人間関係の構築に関する私の目標を前進させる。私の記憶力強化にとっても欠かせないルーティンだ。

 退屈な作業を他人にやらせるな、という意味ではない。むしろ、誰かに任せたほうが自分の利益になるかどうかを、折に触れて確認するべきだ。

 情報を反復して思い出すことに役立つ作業は、記憶の統合、つまり短期的な記憶が長期的な記憶に変換されるプロセスを助ける。情報を繰り返し勉強することによって、記憶を形成するニューラルネットワークが強化され、より高い精度で詳細を思い出せるようになる。