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トランプ政権の誕生以降、米国と中国の対立がただでさえ激化していた中、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは火に油を注いだ。両者の関係は悪化をたどり、米国と中国の両方でビジネスを展開することはますます困難になるだろう。企業は、両国の関係改善を願うのではなく、米中分断に備えて現実的な手を打つべきだ。本稿では、検討すべき4つの具体策を紹介する。


 今年に入って大半の期間、ニュースは新型コロナウイルス感染症に独占されている。人々も企業も生き抜くために闘っているのだから、無理もないことだ。

 とはいえ、その裏ではもっと大規模かつ長期的な問題が進行しており、多くの企業はまもなく、その対処を迫られることになる。脱グローバル化が加速する中、2つの敵対的な経済圏――一つは中国を、もう一つは米国を中心とする勢力が台頭しているのだ。

 この状況に至る過程は、かなり前から始まっていたのは間違いない。脱グローバル化は10年以上前から進行していた。少なくとも国際貿易はパンデミック発生以前から停滞しており、海外直接投資は2007年のピークから2018年までに70%落ち込んでいる。

 米中の関係が親密であったことはないが、習近平政権下で対立はさらに深まる局面に突入した。2018年にはすでに、新たな冷戦の小競り合いが始まっていた。

 新型コロナウイルス感染症が、この事態を加速させている。戦略物資の生産を国内に戻すことが正当化されるからだ。たとえば日本政府は先頃、生産拠点の脱中国・国内回帰を促進するために2200億円を計上した。

 米中間にはただでさえ多くの摩擦点があったところに、パンデミックはさらに別の大きな争点を直接・間接にもたらしている。そこにはパンデミック発生の責任問題や、香港における「一国二制度」をほぼ確実に終わらせる中国政府の決定なども含まれる。

 政治リスクを扱うコンサルティング会社の関係筋によれば、米国の企業は、2020年11月の大統領選挙でトランプ政権が終わる可能性に望みを託しているという。彼らは失望に終わるだろう。第1に、トランプの落選は明らかというにはほど遠い。より重要な第2の理由として、昨今の民主党と共和党の間で見解の一致が一つでもあるとすれば、それは「中国の躍進には要注意」という点である。

 筆者は2018年後期、国際的企業の取締役109人へのアンケート調査で、2つの排他的経済勢力圏による冷戦のシナリオを提示し、戦略的にどう対応するか尋ねた。すると、主に2つの選択肢が寄せられた。一つは、両方で事業を徹底的に現地化し、どちらの側でも現地法人らしく見なされるようにする。もう一つは、どちらか一方の経済圏に撤退するという対応だ。

 この調査の時点では、両方の経済圏で現地化戦略をうまくやり遂げるには、卓越した戦略的手腕が必要とされた。成功すれば自社を褒め称えるに値した。しかし、両者の緊張が高まり関係が弱まるにつれ、現地化の徹底はますます困難となり、さらなる分断への備えがいっそう重要となる。

 具体的には、米国企業、および米国と連携する市場で操業している企業は、以下の準備をしておくべきである。