(3)中国の企業および大学との関係を見直す
先進技術の分野で軍事目的の転用が行われる可能性を考えれば、これらの関係に潜む危険性は明らかだ。しかし、米中の関係がますますゼロサムゲーム(一方の利益が他方の損失になる)と見なされるようになれば、一見問題のなさそうな他の関係にも影響が及ぶことになる。
米国の「エンティティ・リスト」(輸出規制の対象となる組織)、または中国による「信頼できない事業者リスト」に加えられる企業が(妥当か否かはともかく)増えており、セクター全体や経営者個人が影響を受ける可能性がある。
たとえば中国は昨年、華為技術(ファーウェイ)経営幹部の孟晩舟(メン・ワンツォウ)を逮捕したカナダへの報復として、中国国内で2人のカナダ人を逮捕し、別の1人に死刑判決を下し、菜種油の輸入を停止した。対立をめぐる同様の報復は、ノルウェー(サーモン)とオーストラリア(牛肉)にも及んでいる。
次はあなたの業界、会社、または経営幹部がターゲットとなるかもしれない。
(4)投資の地政学的リスクを考慮する
米国側市場に依存している企業による中国経済圏への投資は、ますます正当化が難しくなるかもしれない。既存の案件を維持するための資金追加も含めてだ。その投資によって敵側の経済成長、つまり強化になぜ貢献しているのか、投資家には説明が求められることになる。
経済発展は民主化を、ひいては平和(民主的平和)をもたらすという主張は、中国に関しては支持されなくなっている。習近平の政権下では、民主的統治の可能性は遠のいたからだ。
経済の相互依存は対立を生じにくくさせる(商業的平和)という意見は、説得力があると思えるかもしれない。
だが実際には、経済的相互依存の喪失によって中国と米国に課せられる経済的代償は、両国のGDPに照らせばごくわずかしかない。米GDPの規模(入手可能な最新データでは2018年は21.5兆ドル)をもってすれば、米国による中国への直接投資(2018年は1170億ドル)の全額を半週で補うことができる。
つまり、企業は投資計画の策定に際し、地政学的な対立を織り込んでいく必要がある。
米中関係の行く末をめぐる現在の厳しい見通しは、間違いであると判明するかもしれない。グローバル化と国際協力の果実を、私たちが再び享受することは可能だ。それが実現することを心から願う。
しかし、願うことは戦略ではなく、備えをしておくに越したことはない。
HBR.org原文:Prepare for the U.S. and China to Decouple, June 26, 2020.
■こちらの記事もおすすめします
取締役会がチャイナ・リスクを理解するための5つの問い
企業は「脱グローバル化」への準備ができているか
グローバリズムとナショナリズムは二者択一ではない