(1)コミュニケーションを合理化し、役割を明確にする

 専門家が集まったチームと、専門のチームは同じではない。蘇生室にリーダーがたくさんいると不協和音が生じ、チームがタスクに集中し、優先順位をつけることが困難になる。

 危機の間、院内のさまざまな分野で中心的な役割を担う多くのリーダーが、善意から、重要だが冗長な最新情報を日々メールで送信していた。あまりに情報量が多く、多忙な臨床のシフトの間やその他の業務中に読み込むのはほぼ不可能だった。

 私たちはまず、部のメールサマリー担当者を一人設けた。日々届く大量のメールを、理解しやすく一貫性のあるフォーマットにまとめ、毎日同じ時間に送信する役割だ。件名、フォーマット、セクションの見出しをすべて統一することで、認知的な負荷を軽減し、急速に変化する検査やクリニカルパス、個人用防護具の在庫、健康に関するイニシアチブを効率的に確認できようにした。

 各メールに肩書きと役割を明確に記載することも重要な点だった。この情報を必ず含めることで、受信者が誰なのか、なぜそのスレッドに含まれるのかを読み取る手間を省くことができ、拡大するチームの全員が互いの役割を認識できる。たとえば、ロムニー博士をCCに追加する場合、送信者は 「+ロムニー博士、クオリティ副主任、死亡率の調査を監督」といった注意書きを付ける。

 他の送信者にこうした情報を求めるのは気まずいかもしれないが、すべての受信者が同じ認識を持つのに役に立ち、またのちに増えた受信者の数を減らし、業務に直接関係するチームに絞るのにも有効だ。

 たとえば、状況認識のためだけに含まれている人がいた場合、のちに「彼らのメール受信量を減らすためBCCに移動」(宛先から除外する旨を説明する)すれば、意思決定者の役割を果たす人をグループメッセージから外しつつ、彼らはチームが前進しているとわかる。

(2)指令と要求は明確にする

 蘇生室では曖昧なリクエストをする余裕はない。「誰かメスを取ってもらえますか」などと個人に向けて要求したりすることはない。EDでは、相手を名指しして特定のタスクを求めることで、より迅速な対応を促すことができ、重要な追加情報(「メスが足りません!」など)も得られやすい。

 同様に、危機下でメールを送る際には、受動的な表現を避け、特定の個人に明確に依頼をし、具体的なタイムラインと完了の報告方法を提示して、コミュニケーションを完結させる。

 メールは一般的に、相手が引き受けることができるのかを確認せず、人に仕事を振るツールとして悪用される。危機の際には、メールの最初の送信者が受信者に対し、メッセージを受領したことや、依頼された作業ができるかどうか、そして仕事が完了したことを連絡するよう促すことが欠かせない。

 メールの件名は、緊急指令の際、リーダーが注目を浴びるために上る踏み台のように活用することができる。括弧を使って、件名の中に要求する行動を表記すれば、受信者がメッセージに優先順位をつけやすい。

 たとえば「件名:[今日中に返信を] Re:マスク配送の状況」などとする。よく使う言葉にチームが慣れたら、省略した表現(「AR= action requested」、「EOD= end of day」など)を使ってもいい。

(3)スレッドに途中で追加されたら説明を求める

 危機的な状況になると、全員が同じ認識であることを確認するため、メールのスレッドに受信者を追加することがよくある。

 これは重要なことだが、会話の途中で追加された人にとっては、状況を把握するのに時間がかかる。長いメールを数分かけて読んでも、メッセージの意図や自分の役割がわからないときもある。

 EDで患者の蘇生に新しいメンバーが加わったときは、そのメンバーに要点を伝えることがCRMの基本だ。たとえば、「40歳男性、自動車事故で心停止状態で搬送。エピネフリンの3回目の投与中です」という具合だ。

 メールに追加されたら、長いスレッドを読んで内容を把握するのに時間を費やすのではなく、次のように説明を求めることだ。「すみません、長いメールが送られてきましたが、なぜ私がいま追加されたのか、私は何をすればいいのか明確に教えてもらえますか?」