レジリエンスの評価とマネジメントの難しさ

 これまでのマネジメント手法にはいくつかの大きな制約があり、そのために自社のレジリエンスの度合いを評価したり、レジリエンスを実現したりすることが難しい。具体的には、以下のような問題がある。

・企業は何よりも、配当と株価上昇を通じて、株主にもたらす価値を最大化することを目的に設計されている。自社が直面している物理的なリスクを開示することはあっても、自社のレジリエンスの度合いを評価しようと試みる企業はほとんどない

・企業と株主は目先の収益を最大化することにばかり目を向ける傾向があるが、レジリエンスを高めるためには、複数の時間軸で物事を見なくてはならない。差し当たりの効率や成果が犠牲になっても、将来にわたり持続的に成果を挙げ続けることを目指すべきなのだ。

・企業はたいてい、固定的なプランを立案して、それを実行することに長けている。そのようなやり方は、物事の因果関係が明確で、変化が少なく、予測可能性が高い状況であれば、うまく機能する。しかし、レジリエンスが問われるのは、未知で、一定しておらず、予測不能で、確実性が乏しく、しかも重大な結果をもたらす可能性がある状況だ。

・現在の資本主義のあり方では、一つひとつの企業は言ってみれば経済的な孤島のような存在で、それぞれが個別に最適化を目指すものとされている。このような仕組みは、マネジメントと説明責任を単純化できるという利点もあるが、さまざまな利害関係者の経済的・社会的な相互依存関係が考慮されない。

 それに対してレジリエンスは、個々のプレーヤー単位ではなく、システム全体に関わるものだ。仮に個々の企業がレジリエンスを持っていたとしても、サプライチェーンや顧客基盤、そのほか自社のビジネスの土台を成す社会システムが激しい打撃を受けていれば意味がない。

 こうした問題があるため、マネジャーがレジリエンスを強化するには、既存のアプローチに新しいアイデアやツールを接ぎ木するだけでは十分でない。ビジネスに関するメンタルモデルを根本から変えることが不可欠なのだ。

 ここで求められるのは、複雑性、不確実性、相互依存関係、システム思考、長期的視点を受け入れることのできるメンタルモデルである。

 言うまでもなく、多くの企業はすでに、何らかの形でリスク・マネジメントを行っている。とはいえ、ほとんどの場合は、既知の特定のリスクについて理解し、そのリスクにさらされる機会を最小化することを目指しているにすぎない。

 レジリエンスをはぐくむうえでは、未知のリスクにも対処することが必要だ。環境からのストレスを吸収し、さらにはそれを強みに転換するために、どのような適応や変化が求められるのかも考えなくてはならない。