
「ブラック・ライヴズ・マター」運動を契機に、人種的平等の重要性がかつてなく注目を浴びている。この問題は長らく指摘されていたが、白人中心の社会でそれを実現するのは容易ではなく、企業も大学も形式的な対応にとどまっていたのが現状だ。そうした中、2015年に新設されたワシントン大学社会学部は、真の意味で人種的多様性を担保した希有な存在である。ダイバーシティと優秀な人材の登用を両立するために、何をすべきなのか。
筆者は、ワシントン大学セントルイス校の社会学部に勤務している。
本学部には、興味深い特徴がいくつかある。2015年に設置された、全米で最も新しい社会学部の一つであること。隣接する街ファーガソンで黒人少年マイケル・ブラウンが警察官ダレン・ウィルソンに射殺された事件で、大陪審がウィルソンを不起訴とする決定を下したのを機に大規模な抗議行動が起きたのちに誕生したこと。
しかし、ひょっとすると最も顕著な特徴は、本学部が現代の米国の大学で、最も人種的に多様な学部の一つであることだろう。これは偶然の産物ではない。研究レベルが高いと同時に人種的に多様な学部をつくろうという、ステークホルダーの意図的かつ一貫した努力の結果だ。
わずか5年で、本学部はフルタイムの教員を13人も擁するようになった。その半数近くが非白人だ。それだけではない。主任教授8人の半数も非白人だ。また、これら主任教授のうち3人が女性で、3人が黒人である。
これは人材プールから離脱者が多すぎるとか、強力な候補者を十分確保するのは難しすぎるなどの理由で、多くの大学や組織が実現不可能としてきた類の人種的多様性だ。ワシントン大学社会学部は、こうした結果を出すことが間違いなく可能であることを示している。
以下、私たちがそれをどのように実現したかを紹介しよう。