ワシントン大学の上層部が社会学部の設置を決定したとき、担当の事務局者と諮問委員、そして教授陣のリーダーは、早い段階から、研究活動と教育活動に秀でた学部にするだけでは不十分だと考えた。人種的にも多様な学部でなければならないというのだ。
ダイバーシティ(多様性)の実現と、最高の人材の登用は両立可能だと、彼らは確信していた。実際、この2つの要請は、一般に考えられている以上に相互補完的であることが多い。
社会学部の創設に向けた教員探しが始まり、2015年に筆者と2人の同僚(どちらも白人男性だ)が採用された。我々は最初の数ヵ月間、人種的に多様な学部の構築を最優先課題にした。筆者は唯一の女性で、唯一の非白人として学部会議に出席しながら、「このような光景の学部会議は今年が最後だ」と思ったことを鮮明に覚えている。
幸い、同僚たちも同じ考えを持っていて、それを公然と口にした。つまり、人種的に多様な学部を建設することに、集団的かつ共有されたサポートが存在したのだ。
女性やマイノリティの男性が少数派の職場では、この問題を提起して対処する役割が個人に任されることが多い。しかし、ワシントン大学社会学部では違った。これは重要な問題であり、本学部ではそのコミットメントに沿って採用活動を行うと、全員の意見が一致していた。
人種的に多様な学部を構築することに対する、こうした初期の支持は、決定的に重要な役割を果たした。それは本学部の雰囲気を決めると当時に、その後の採用活動に影響を与えた。
同時にそれは、人種的なダイバーシティの構築は、リーダーたちがそれを優先することに同意していると、はるかに容易になることを示している。学部とマネジメントの上層部が、人種的ダイバーシティの構築を優先しなかったり、積極的に努力しなかったりする状況では、変化を起こすのは、はるかに難しいだろう。
本学部初めての採用活動で助教を探すことになったとき、幅広い場所に求人広告を出した。既存のネットワークに頼ると、非白人候補者を排除することが多いとわかっていたため、卒業生などのネットワークにもっぱら頼ることはしたくなかった。そのようにすると、白人の候補者が圧倒的に多くなる可能性が高いからだ。
そこで本学部は、主に非白人の社会学者で構成される団体を頼りにした。同僚たちにも声をかけて、本学部が助教を探していることと、特にマイノリティの候補者を検討したいと考えていることを伝えた。有望そうな非白人候補者を探し、彼らにコンタクトし、応募を促す活動も実施した。
要するに、非白人候補者が応募してくるのをただ待っていたのではなく、多様な候補者プールをつくるための積極的な努力をしたのだ。この努力は、採用プロセスのあらゆる段階で継続された。候補者を絞るときはいつも、絞り込まれたリストが多様な顔ぶれになっているかチェックした。
この段階でも、大学上層部のサポートが決定的に重要な役割を果たした。事務局幹部は、人種的に多様な学部をつくる努力を歓迎し、繰り返し励ましてくれた。
もっと重要なことに、そのサポートを具体的な行動で示してくれた。非白人教員の関心を得て、採用し、維持するために必要な資金的リソース(終身在職権を取得できるポジションや、予算、教員を維持する競争的な雇用条件)を提供してくれたのだ。上層部が人種的多様性を重視しているとわかっていることは、重要である。