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世界では徐々に人種やダイバーシティの重要性に関する理解が進み、「ブラック・ライヴズ・マター」運動は人種差別問題に関する議論を活発化する契機となった。こうした動きは目に見える差別を解消することを期待させるものの、偶然や無意識からくる差別的な言動、すなわち「マイクロアグレッション」が根絶されるまでには至らないだろう。黒人をはじめとするマイノリティは、こうした差別に直面したときにどう対処すべきなのか。


 米国(と世界)の職場で、ようやく人種や正義、ダイバーシティ(多様性)、イクオリティ(平等)、インクルージョン(包摂)について、リアルな会話が交わされている。結構なことだ。願わくは、それが個人と組織の両方で、人種差別をなくすための有意義な行動につながってほしいものである。

 だが、こうした会話が非常に居心地の悪いものになることは、ほぼ間違いないだろう。それは、白人としての特権に初めて気づいた従業員やリーダーだけでなく、同僚との会話で「マイクロアグレッション」に直面したり、それを指摘する必要に迫られたりする非白人、特に黒人にとっても不快なものになるだろう。

 マイクロアグレッションとは、誰かが偶然(または意図的に)不快な発言をしたり、無神経な質問をしたりすることをいう。具体的には、ターゲット(個人またはグループ)に対する敵対的、軽蔑的、否定的な人種差別や侮辱を示す言動や環境と定義される

 黒人にとって、マイクロアグレッションは仕事とプライベートのあらゆる場面で日常的に存在する。一見すると無害のように感じられるが、人種差別的な思い込みやステレオタイプに鑑みると相手を大きく傷つける可能性がある表現として、以下のようなものがある。

・「私がきみを見るとき、肌の色は目に入っていない」(相手が黒人であることを認めないか、黒人だからといって不利に扱わないと示唆する表現)

・「私たちは皆、人間という同じ種だ」(相手の黒人としての経験は、ほかの人種と同じだと示唆する表現)

・「きみはとても理論整然としているな」(多くの黒人は知的会話ができないないというステレオタイプを示唆する発言)

・「今日は髪が膨らんでいるね! クライアントとのミーティングにもその髪型で行くつもりかい?」(黒人の自然な髪型はプロらしく見えないと示唆するコメント)

・「社会では、頑張れば誰でも成功できる」(黒人が成功できないのは怠惰だからだと示唆するコメント)

 マイクロアグレッション(「極小の攻撃」)という言葉が示唆するように、こうしたコメントはささいなものに思える。しかし、それが蓄積すると、従業員体験、身体的健康、精神的ウェルビーイングに悪影響を与える可能性がある。

 実際、研究によると、マイクロアグレッションのような小さな対人差別は、あからさまな差別と同じくらい有害だ。