●状況を見極める
マイクロアグレッションに対処するのに、自分がどれくらいのエネルギーを使ってもいいと思っているか考えよう。マイクロアグレッションには例外なく対処しなければと思う必要はない。声を上げるべきときを自分で決めてよいのだと覚えておこう。そのためには、以下の検討事項が考えられる。
・問題と人間関係の重要度
そのトピックと人間関係のどちらか、または両方が自分にとって重要ならば、聞き流すのは間違ったアプローチだ。あなたの気遣いが相手に伝わるようにしつつ、問題点を指摘し、自分の懸念が伝わるように意見を示そう。
・自分の気持ち
マイクロアグレッションは、「不快に思う自分が間違っているだろうか」と思わせることがある。ありのままの感情(怒り、失望、フラストレーション、腹立たしさ、混乱、困惑、疲労感など)を持つことを、自分に許そう。どんな気持ちも正当なものであり、いつ、どのように対処するかの判断に影響を与えていい。
怒りなど、積極的なネガティブ感情を抱いたなら、時間を置いて対処したほうがよいだろう。困惑したなら、すぐにはっきりさせたほうがいいかもしれない。マイクロアグレッションを聞いて、黒人として働くことに疲労感を覚えたなら、聞き流してもいいかもしれない。相手のためにではなく、あなたの心のウェルビーイングのために。
・現在そして未来、どんな人間に見られたいか
マイクロアグレッションに対して声を上げるにせよ、沈黙を守るにせよ、結果が伴う。それぞれの状況で、どちらが重要かを判断できるのは、あなただけだ。
●相手の敵意を和らげる
マイクロアグレッションに声を上げることを選んだ場合、相手の敵意を和らげる準備をしよう。私たちが人種に関する会話を避ける理由の一つは、それが相手を防御に走らせるからだ。マイクロアグレッションをした人物は、多くの場合、人種差別主義者と見られる(または人種差別主義者であることを暴かれる)ことを恐れている。
これからする会話は相手にとって不快なものになるかもしれなが、相手がいま言ったこと(やったこと)はあなたにとって不快であることを説明しよう。一緒に根本原因を探りながら、特定の言動が気まずい感覚をもたらすことを、あなたの立場になってわかってもらおう。
●真意を問う
マイクロアグレッションをした人物に、その言動を説明してもらう。「どういう意味ですか?」など真意を探るような質問をしよう。これをやると、相手は事の経緯を振り返りながら、自分の言動を反省できる。それは、あなた自身が相手の意図をよく理解する機会にもなる。
この世で最大の特権の一つは、自分に特権があることに気づかない自由だ。そのためマイクロアグレッションは、意図せず不快感を招くことが多い。相手の意図を説明通りに受け入れることを明らかにしつつ、会話の中心をマイクロアグレッションのインパクトに移そう。
あなたの当初の解釈と、その理由を説明しよう。それでも相手が「そんなつもりはなかった」と言い逃れをするなら、会話に応じてくれたことに感謝しつつ、マイクロアグレッションがあなたに与えたインパクトにも理解を求めよう。
●決断する
この事件があなたの人生と仕事にどのような意味を持つか(その交流からあなたが何を学び、何を失ってもいいと思ってよいか)を決めるのは、あなた自身だ。
ほかの虐げられたアイデンティティを持つ人たちと同じように、黒人はすでに職場で、バイアスのかかった期待と評価の対象になっている。そのマイクロアグレッションがなくても、人生はすでに十分大変だ。だから自分の喜びを守ることを、最大かつ最も根気強い抵抗の行為にしよう。
非黒人のビジネスパーソンには、長年差別の対象になってきた人たちを支援するのは難しいことを知ってほしい。あなたは学びながらも、間違いを犯すだろう。そして、そうした学びは永遠に続けなければいけない。
マイクロアグレッションをとがめられた人、あるいはとがめられた人のカウンセリングに当たる人に、いくつか助言をしておこう。
・たとえ悪意はなくても、マイクロアグレッションのインパクトは変わらないこと。
・黒人の同僚や上司や部下の経験を理解しようと努める際、「向こうが教えてくれるべきだ」という態度を取らないこと。
・黒人の同僚がインサイトを伝えてきたときは、それを信頼しよう。言い訳をしたり、屁理屈をこねたりしないこと。
・世界と職場について、自分が真実だと思っていたことの大部分を前向きに考え直し、自分も不平等に加担していた可能性が高いことを認めよう。
職場で人種に関する率直な対話を奨励する組織は増えているが、歴史的に、声を上げた黒人従業員が大きな反発を受けてきたことは無視できない。文化が変わるためには、時間と意識的な取り組みが必要だ。
したがって、マイクロアグレッションについてタイムリーかつ戦略的な対話を持つことは奨励されるが、個別のケースにどう対処するかは、究極的には当事者の判断に委ねられるべきだろう。
HBR.org原文:When and How to Respond to Microaggressions, July 03, 2020.
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