Illustration by Maria Hergueta

在宅勤務が少しずつ解除され、会社で仕事を始める人が増えてきた。しかし、通勤電車やオフィスで新型コロナに感染するかもしれない、子どもを預けられる場所がなく満足に働くことが難しいなど、職場復帰に不安を抱えている人は多い。会社に行っても、「新しい現実」の中で仕事をするのに慣れるまでは、さまざまな苦労を伴うだろう。本稿では、そのストレスを最小限に抑えて、スムーズに適応するための5つのポイントを紹介する。


 新型コロナウイルス感染症による自宅待機が少しずつ解除され、世界中の企業が従業員を職場に戻そうとしている。「ようやく外出できる」と大喜びの人もいるかもしれないが、まだ不安を抱いている人は多い。

 もしあなたが不安に思っているなら、それはあなただけではない。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が労働者1000人以上を調査したところ、職場復帰をためらう理由が複数あると答えた人は70%に上った。また、感染の懸念を最大の理由に挙げた人は51%に上った。交通機関を使うことへの不安や、信頼して子どもを預けられる場所がないことを挙げた人もいる。

 こうした不安は、意外でも理不尽でもない。在宅勤務への移行は大変だったかもしれないが、職場復帰はもっと大変かもしれない。その一因は、予期せぬ変化に対する人間の脳の対処法にある。

 数ヵ月前に在宅勤務が始まったとき、手がかりになる前例はほとんどなかった。ダイニングルームをオフィスに変えるのも、地下室を教室に変えるのも、すべて未経験だった。「慣れないことに途方に暮れる」のはもっともな感覚であり、アドレナリンが出てくるに従い、私たちは要領がよくなり、クリエイティブになり、最終的に適応できるようになった。

 しかし、ストレスや必要性からそうなった場合でも、私たちは満足感を得られることが多い。人間は、未経験のことをやり遂げると、その結果に対してだけでなく、不安や経験不足を乗り越えたことを誇りに思うようになるのだ。

 一方、職場に復帰するということは、よく知っている世界に戻ることを意味する。人間の脳には、ルーチンワークを最小限の知的労力でこなすためのショートカットからなる「自動操縦モード」がある。そのため、どこをどう運転したか覚えていなくても、ちゃんと会社に着いている。

 ところがそこで、あなたの脳がルーチンワーク向けの自動操縦モードを起動しようとすると、ニューリアリティ(新しい現実)によってクラッシュしてしまうだろう。そのとき、あなたは「慣れた仕事に途方に暮れる」ことになる。

 車を停める場所、体温測定、デスクの配置、コーヒーポットの前で2メートルの間隔を空けて並ぶこと、それにマスクを着用することなどは、あなたの脳が予測することと矛盾するプラクティスだ。そんなことには10秒で適応できるかもしれないが、それには巨大な知的エネルギーが必要であり、職場復帰後の最初の1週間は、それを1日に何度もやらなくてはならないだろう。

 職場復帰のストレスを最小限に抑え、できるだけスピーディに新しい現実に適応できるようにするためのアプローチを、いくつか紹介しよう。