(1)事前の準備を強調する
「事前準備」の概念を見直す必要があるかもしれない。取締役会のメンバーが資料を読んでおくだけではなく、会議の前にコメントを交換するよう促すと効果的だ。そのために、ファイル共有サービスや、セキュリティの確保されたチャットサービスを利用してもよい。
事前にこのような活動を行うことにより、メンバー全員の意見が尊重されるようになるし、会議が長引かず、話し合いが散漫でなくなる。その結果として、取締役会が導き出す結論の質も高まる。
「昔ながらの取締役会と違って、会場まで足を運ぶ必要がないため、時間にいくらか余裕が生まれて、しっかり準備ができるようになり、集中力も高まった」と、コカ・コーラと生活用品大手コルゲート・パルモリーブの取締役を務めるヘレン・ゲイル博士は述べている。
(2)議題を絞り込み、議論を活性化する
コラボレーションと取締役会の監督機能を実践するうえでそれほど重要でない項目を議題から外せば、おのずと集中力が高まり、時間の節約にもなる。
「バーチャル会議では、取締役会の信認義務と、その役割に基づく意思決定に、テーマを絞り込むべきだと思う」と、ドラッグストア大手ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンスのジェームズ・スキナー会長は言う。それ以外の近況報告は、メールで行えば十分だというのだ。「そうすれば会議が短時間で済むし、意思決定と信認義務に集中できる」
バーチャル会議では、対面式の会議よりもすぐに疲れやすい。そこで私たちは、1つの議題に関する議論を15分で終了するように勧めている。45分かけてパワーポイントでプレゼンをする時代はもう終わったのだ(そんな時代は二度と戻ってこないでほしいものだ)。
取締役たちが議題に注意を払う義務を負っていることは事実だが、幹部チームは、取締役たちを退屈させて、取締役会の間にこっそりスマートフォンのメールチェックをするような事態を招かないようにしなくてはならない。
バーチャル会議を行うときは、休憩時間を十分に確保しよう。会議を90分間続けたら、15分間休憩するとよいだろう。
また、20分程度の「散歩休憩」も差し挟もう。取締役たちがそれぞれ短い散歩に出かけて、その間に会話するのだ。さまざまな研究によれば、屋外に出るだけでも、創造的な問題解決が後押しされることが明らかになっている(「散歩休憩」を計画している場合は、出席者に前もって知らせておこう。そうでないと、すぐに散歩に出かけられない服装で会議に参加して、慌てる人が出てきかねない)。
(3)議題を1~2週間にわけて話し合う
「その会社では、普段は3日間の戦略検討会議を行っている」と、百貨店大手のノードストロームや通信大手のベライゾンなど、いくつかの会社で取締役を務めているシェリー・アーシャンボーは言う。しかし、先日は「1.5~2時間の会議を週1回、4週にわたって行った」。これにより、メンバーのエンゲージメントが強まり、成果も高まった。
議題を数回の会議に分けて話し合えば、取締役たちは、たとえば最初の会議で重要な戦略上の問いを投げ掛け、翌週の会議までにじっくり考え、情報を集めて、議論を前に進めることもできる。