(6)「率直な意見の時間」を設ける

 スケジュール上の制約により、すべての議題について小グループで議論する時間を確保できない場合は、せめて出席者のコメントを促す時間を設けるとよい。

「対面式の会議の場合、その場の雰囲気により、誰か発言したい人がいれば察知できるかもしれない。その点、バーチャル会議ではそうした手掛かりに気づくことが難しい」と、ブログソフトウェアのワードプレスを開発しているオ-トマティックの創業者であるマット・マレンウェッグは言う。

 同社は62を超す国に社員を持つ完全リモート勤務の会社だ。リモート形式の取締役会は、2014年から実施してきた。

 短い時間でもよいので、本音を語れる時間をスケジュールに織り込もう。メンバーはこの時間を利用して、議論をいったんストップさせ、まだ論じられていない問題を問うべきだ。

(7)ディナーに代わる経験を用意する

 取締役会のメンバーと経営幹部たちが一緒にディナーをとることで生まれる連帯感は、オンラインで再現することが難しい。しかし、一緒に食事をしなくても、取締役が幹部たちとの絆を強化し、自社のビジネスについての理解を深め、次期経営トップの候補たちについて直接知ることは可能だ。

 たとえば、取締役2人がビデオ会議で幹部たちと順番に会話をするようにしてもよいだろう。まず、25分間にわたり幹部1人と話す。そして、25分経つと、その幹部はビデオ会議システムの中の「控え室」に移る。2人の取締役は、それまでの会話を通じて得られた新しい情報について数分間話し合う。そのあと、また別の幹部を対象に同じことを繰り返す。

 この手法は、大人数で実践することも可能だ。みんなでディナーをとるときのように、取締役たちが幹部たちと肩の凝らない会話をして深い話をする場を設ければよい。これにより、取締役たちはリスクを把握しやすくなり、会社の状況をよく理解できるようになる。

(8)大物ゲストを迎える

 リモート形式で行われるバーチャル会議は出席しやすいため、誰かを会議に招いて話を聞き、取締役会の視野を広げることが容易になる。世界中から最高レベルの専門家を招いて、5分でも10分でも手短に知見や専門知識を披露してもらってはどうだろう。

 これを実践すれば、多様な思考や視点を取り入れることにより、取締役会が集団思考に陥ったり、死角にはまり込んだりするのを防ぐ効果が期待できる。リモート形式であれば、丸1日(あるいはそれ以上の時間を)割いて会場に足を運ばなくても参加できるため、ゲスト候補に声をかけやすいだろう。

 取締役会をバーチャル会議で開催すれば、社外の専門家だけでなく、自社内の人物にも出席を求めやすくなる。社員が短時間だけ取締役会に出席して、質問に答えることが可能になる。これにより、取締役会はより迅速に、そしてより質の高い情報に基づいて意思決定を行える。