リモートワークを全員にとって成功させるために、リーダーには何ができるのか。
ビジネスでは、リスクを特定し、管理し、低減することが常に必要だ。リーダーは常に、不完全な案の中から選択をし、欠点を最小限に抑え、利益を最大限に増やし、短期と長期のバランスを取らなければならない。
同じことが在宅勤務にも言える。リーダーシップと厳格性があれば、在宅勤務の約束は実現できる。しかしそのためには、リーダーが、これまで述べてきた大きな課題に対処しなければならない。
以下のガイドラインは、その出発点になるだろう。
(1)憶測するのではなく、データを集めて分析する
リモートワークの効果を、階層別で調べてみること。新人レベル、中堅レベル、エグゼクティブレベルで、キャリア上の恩恵は同じなのか。ダイバーシティに関する他の領域と同じように、データはギャップを明らかにするカギであり、アナリティクスの進歩と、よりエビデンス・ベースの人事をする意欲があれば、一定の進歩が得られるはずだ。
(2)自社の文化にあらがわずに変化する
あなた会社のユニークな文化が、リモートワークの利用者や利用方法にどのような影響を与えるかを分析し、調査して、理解しよう。
ズームやマイクロソフト・チームズは誰でも使えるが、だからといって誰もが在宅勤務の文化を本当に受け入れているとは限らない。テクノロジーが柔軟性を高めるのは間違いないが、それが社内の大きな変化につながるのは、会社の文化に統合または融合されたときだけだ。
簡単に言うと、文化が「いま物事をどうやるか」であるならば、組織が考えるべき最大の問いは「いま在宅勤務をどうやるべきか」である。その答えを探るときは、ジェンダー平等などのダイバーシティの側面も考慮すべきだろう。
(3)リモートワークは孤立した状況で起きるわけではないと理解する
父親と母親のジェンダー規範的な役割に積極的に疑問を投げかけ、マネジャーや同僚のリモートワーキングに関する認識や期待が、こうした規範に縛られないようにしょう。
(4)2種類の従業員が生まれないようにする
従業員のほとんどが在宅勤務であったとしても、それが全員ではない場合、会社をクラブのVIP席や空港のファーストクラス・ラウンジのようにしてはいけない。
人間は地位を求めたり、大勢の中で目立ちたいと思ったりするものだが、組織が有効なシステムとして機能するためには、公平でコラボレーションを尊重する文化を通じて地位を追求するよう、奨励しなければならない。
このバランスをとるためには、従業員の自宅とオフィスにおけるジェンダー分布を調べて、全員にとって平等な柔軟性と「ハイブリッド」なアクセスを確保する必要がある。
(5)マネジャーに新しいルールを教える
文化は常に変わっている。その最大の触媒となるのは、チームから見た、マネジャーの日々の行動と意思決定だ。
在宅勤務をすべてのスタッフにとって成功させたいのなら、スタッフが在宅勤務をどのようにアレンジしているかをマネジャーが理解するとともに、燃え尽き症候群や仕事のストレスやワーク・ライフ・バランス、そしてインクルージョンについて、マネジャーが訓練を受ける必要がある。
これには、在宅勤務中のスタッフについて知るべきことと、知るべきでないことについての説明や、プライベートなスペースとパーソナルなスペースの境界線についての意識向上が含まれる。
(6)アウトプットに注目する
スタッフの勤務評価の基準やプロセスをアップグレードし、結果に注目しよう。子どもを預けられなかったロックダウン中のパフォーマンスは評価に含めないことも極めて重要だ。
コロナ禍と不況の対応に追われるリーダーたちにとって、こうした指針は非現実的な重荷に感じられるかもしれない。
しかし、この時代が多くの変化をもたらすことは不可避であることを考えると、リーダーの選択肢は2つしかない。すなわち、結果を積極的に形づくるか、物事の展開を傍観しているか(その場合、受忍できない結果が生じるリスクがあるほか、会社が破綻する可能性が高まる)、だ。
より生産的で、熱意があり、忠実で、多様な労働力を確保するためには、いま行動を起こすことに大きな価値があるはずだ。
HBR.org原文:Why WFH Isn't Necessarily Good for Women, July 16, 2020.
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