今月号の特集は、大ヒットした2019年3月号の特集「PURPOSE(パーパス):会社は何のために存在するのか。あなたはなぜそこで働くのか」の、言わば実践編です。
企業は近年、自社のパーパス(存在意義)を発信する傾向を強めています。ミレニアル世代が成人年齢に達し始め、社会課題の解決に結び付いたパーパスを、社会や消費者が重視するようになったため、また、優秀な人材を自社に引き付け、仕事をしてもらうため、です。投資家も、企業の社会貢献を注視します。
そうした状況でのコロナ禍。世界は危機に陥り、企業選定の基準がいっそう厳しくなり、パーパスはまさに企業の存続を決める要因です。
パーパス・ブランディングは、企業のパーパスを社会に的確に伝え、消費者の共感を呼び起こし、選んでもらい、連動した行動を促します。特集1番目の論文はこの方法論を、石鹸ブランドのマーケティングによって、人々を健康活動に導いたユニリーバなどの事例で紹介しています。
筆者が開発したフレームワーク((1)行動変容を促す、(2)内部支援を獲得する、(3)成果を測定する、(4)パートナーシップを確保する、(5)体系的変化を推進する)はまさに実践的。この方法が当てはまる要素を、特集の後半で随所に発見できます。
特集2番目は、スターバックス コーヒー ジャパンCEOの水口貴文氏の論文です。ミッションが経営の核にあり、それをどう実践しているかを詳述しています。働く人がブランドをつくり、消費者の共感を生み、社会に認められたという活動を、読者の皆様は体験しているだけに腑に落ちることが多いでしょう。この成果を支えるのが、「なぜここで働くのかを問う人材育成」ということです。
特集3番目は、グローバル企業のペプシコが、収益を高めながら、パーパスの力で、社会貢献をビジネスモデルの中核に根付かせる変革を示す論文です。当事者の前会長が経験と教訓を具体的に明かしており、大企業の経営者やマネジャーにはとても役に立つはずです。
では実際に、企業や製品のブランドをどう統一的にパーパスに連動させて、マネジメントしていけばよいのでしょうか。便利なフレームワークを使って、段階的に行う方策を解説するのが4番目の論文です。ミッションやビジョン、企業文化といった内部要素と、ステークホルダーにどう認識してもらいたいかという外部要素のつなぎ方が、事例を活用して示されます。
特集の最後は、オムロン社長の山田義仁氏へのインタビュー。同社は、日本企業ではCSR(企業の社会的貢献)実践の先駆け企業です。社会貢献の理念が企業文化に内在化され、社員の働くモチベーションを高めているのは、トヨタ自動車のカイゼン活動のように日々の活動に落とし込まれているから。社内だけでなく、取引企業や当局を巻き込んで成果を出すノウハウが明かされます。