(1)DEIのリーダーに体系的な変革を行う権限を持たせる
従来のDEIの標準的な手法は、組織内にチーフ・ダイバーシティ・オフィサー(CDO)を置き、コンサルタントを雇って強化学習プログラムを行う予算を与えることだ。
しかし、問題が人材の多様性ではなく、人材のキャリアを決める文化にあるとしたら、それだけではDEIの土壌を築くことはできない。コンサルタントを雇ってバイアス研修をするのはいいが、一度にすべてをやろうとしても、日々強化される企業文化を変えることはできない。
徹底的な改革は、CEOにしかできない、経営トップからの支援が必要だ。ホワイトはジャンバ・ジュースのCEOとして、大半のCDOにはできないであろう方法で構造改革を行った。
CEOに就任した当時、取締役会はメンバー10人全員が白人男性だった。そこでホワイトは、新たに2人のメンバー(2人とも女性で、1人はアフリカ系米国人)の加入を後押しした。
取締役会が幅広い声を反映するようになったことが、人材と事業に関する会社の考え方を変えたと、ホワイトは確信している。取締役会の多様性がもう少し低くても、彼は同じように組織を率いただろうが、取締役会からの支持は弱かったかもしれない。そうなると、彼が実現した広範な構造改革を遂行する能力が、制限された可能性は十分にある。
DEIのイニシアチブはCEOが主導するか、CDOに実質的な権限を与える必要がある。より好ましいのは、CEOがCDOの役割も担うことかもしれない。ニールセンのデイビッド・ケニーCEOはその一人だ。CDOは、以下で説明するように全体的な変化を起こす力を持っていなければならない。
(2)魅力的な仕事の割り当て方を変える
魅力的な仕事は昇進につながりやすい。重要なのは、中間管理職は一般に、注目度の高い仕事を誰が手にするかを決める力があることだ。だからこそ、CDOが最善の努力を尽くしても、上層部へのルートに乗るのは白人男性が多くなる。
ホワイトがジャンバ・ジュースのトップに就いたとき、経営幹部の80%は白人男性だった。そして、就任1年目が終わるときは、管理職の半分が女性と有色人種になっていた。キャリア・アップにつながる仕事の割り当て方を変えることによって、ホワイトはこの功績を成し遂げた。
彼は、空港の流通経路の開拓やグローバル市場への進出など、重要な事業目標を達成するためにアクション・ラーニング・チーム(ALT)を任命した。ALTは部門の垣根を超えた15~20人で構成され、5~8人ずつのグループに分かれて、それぞれ明確に定義された問題の解決に集中する。ホワイトはALTのメンバーに通常の業務が免除される期間を与え、90日間の期限を決めた。
何がうまく機能しているのか、何がうまく機能してないのか、機能していないものをどのように修正すればよいのか、最もよくわかっているのは現場の人間である──これが、アクション・ラーニングの背後にある基本的な理論だ。あとは、明確に定義された特定の問題を解決するために、適切なスキルの組み合わせを実現するような適切な人材を選んで、チームを編成する。
ホワイトはこの魅力的な仕事に、これまでならば見過ごされていた人々を意図的に選び、会社全体の労働力よりもはるかに多様性に富んだチームになった。魅力的な仕事を割り当てる仕組みを見直すことによって、上層部の多様性を高める道筋をつくったのだ。