
新型コロナウイルス感染症の流行で、スーパーなどの小売店は難しい状況に置かれている。感染防止にはソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を保つことが不可欠だが、店舗はそもそも人を集めることを前提に設計されている。また、単純な入店規制を設けてしまうと、売上げへの打撃が計り知れない。本稿では、感染防止と利益の確保を両立するうえで有効な3つの原則を紹介する。
米国疾病対策予防センター(CDC)は、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の実践を勧告している。
それぞれの地域の状況が改善すれば小売店は再開できるが、州によってガイドラインは異なる。たとえば、ノースカロライナ州は1平方メートル当たりの客数を具体的に定めているが、オレゴン州は「店内で顧客同士が2メートルの距離を維持できる人数」にするよう勧告しているだけだ。店内でのマスクの着用義務も州によって異なる。
さらに、こうしたガイドラインをどこまで実行するかは、小売店の種類によって異なる。たとえば食料雑貨店は、顧客同士の距離を確保するためにさまざまな措置をとっている。
こうした違いは、各地の感染レベルやソーシャルディスタンスに対する考え方の違い、そして政治的な色合いによるものだ。また、店のレイアウトや顧客の流れ、そして顧客のソーシャルディスタンスに対する理解が異なることから、あらゆるタイプの店に共通して適用されるガイドラインを作成・実施するのも難しい。そもそも、新型コロナウイルス感染症の広がり方についても、まだわからないことが多いのだ。
それらの不確実性と、共通ガイドラインを作成する難しさを踏まえたうえで、本稿では、小売店がソーシャルディスタンスを実践するための3つの一般原則を紹介しよう。
これはオペレーションマネジメントの基礎と、店内の人の流れに関する筆者たちの研究、そして新型コロナウイルス感染症について入手可能な最善の情報に基づく。また、これらの原則が、小売業の採算に与える影響にも注目していきたい。