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自分に心当たりはないが、上司から素っ気ない態度を取られたり、同僚以上にきつく当たられたりする。そのように感じたことはないだろうか。あれこれ悩んで苦しい思いをする前に、いま何が起きているのかを冷静に分析し、状況を改善するための対策を練ろう。上司とどのような関係を築けるかは、生産的に仕事を進めるうえで重要な要素の一つだ。


 上司と合わない――理由はよくわからないけれど、そのように感じたことはないだろうか。

 同僚とは問題なく接しているように見えるのに、あなたのことは避けているか、存在しないかのように振る舞っている気がする。信頼されていないのだろうか、それとも個人的に嫌われているのだろうか。

 あれこれ考えて爆発してしまいそうになる前に、ちょっと深呼吸をして、何が起きているのか冷静に分析してみよう。そうすれば、状況を改善できそうな対策を練ることができるだろう。

能力に対する信頼がない場合

 まず、上司とつながりを感じられないのは、上司に信頼されていないからなのかどうかを考えてみよう。上司が部下を信頼していないときのサインは、たいてい明白だ。

 仕事ができない(と思われる)部下には、ほかよりもレベルの低い仕事を任せるだろう。あるいは、細かく仕事をチェックしたり、重要プロジェクトを任せるときは信頼のおける部下と組ませたりする。あなたがいい仕事をしても、あまりほめてくれなかったり、もっとひどいと、成長や昇進のチャンスを与えてくれない場合もある。上司とあなたの関係に、こうした明白なサインがある場合は、行動を起こそう。

 上司の信頼を回復するためには、意識的な行動を取る必要がある。まず、上司が何を期待しているのかはっきりさせよう。筆者が知る限り、信頼性の問題は、上司が自分の期待を明確にしないから生じることがほとんどだ。

 今度、何かのプラニングについて上司と話をするとき(あなたの成長計画がテーマの年次ミーティングのとき、あるいは月に1度の1対1のミーティングのとき)、「私の立場の人間に期待される貢献はどのようなものですか」とか「どうすればこの仕事にもっと価値を追加できるでしょう」とか「私がもっと成長するためにはどの領域が一番重要でしょう」などと質問して、具体的に何を求められているのか教えてもらおう。

 新しいタスクやプロジェクトに着手するときなら、「いい仕事にするには、どんな要素を含めたらよいでしょうか」などと、より具体的に聞くといい。未来志向の質問をして、上司があなたに抱くイメージ以上の仕事ができることを示唆しよう。もし上司があなたについて正当な不足点を指摘したら、すぐにそれを認めて「今後は~するつもりです」と答えよう。

 上司の期待が明らかになったら、あなたに能力があって、信頼できる部下であることを全力でアピールしよう。能力面では、成功するために必要な知識やスキルや経験について上司と話をしよう。自分の強みだけでなく、足りないところも織り交ぜるとよい。

「このサプライヤーとは3年ほど付き合いがあるので、そこは自信があります。ただ、こちらの顧客については、取引をスピードアップするには誰に話をすればいいでしょうか」といった具合だ。

 すでにあなたの能力に疑問符をつけている上司に、自分の足りない部分をさらすなんて、と思うかもしれない。しかし上司は、あなたが能力をつけるまで、能力がある振りをするのではないかと警戒しているので、自分から不足点を認めると、かえって安心するものだ。

 同様に、同僚に助けを求めるのは問題を悪化させるだけだと、あなたは思うかもしれない。しかし、上司の信頼を得ている人たちの信頼を借りるのは、短期的には賢い戦略だ。

 信頼性の面では、簡単な状況報告を頻繁にしよう。あなたが仕事をきちんとコントロールしている印象を与えられるし、必要なら上司から軌道修正のアドバイスを受けられる。

 何らかのタスクを与えられたら、まず、どう取り組むか考えて、最初の状況報告のとき、その概要を上司に知らせよう。「こういうアプローチをしようと思っているのですが、何か追加したほうがよいことはありますか」といった具合だ。あなたのプランにゴーサインが出たら、少なくとも2回は中間報告をして、仕事を着々と進めていることを知らせよう。

 この種の状況報告のときは、あくまで冷静に事務的なアップデートをして、結果を出す自信があることを示そう。この段階で臆病に振る舞うと、上司の不安をかき立てることになる。

 ほかにも、上司に信頼されていないときに、やるべきことと、やるべきでないことがある。たとえば、つまらない仕事を与えられても、文句を言わないこと。そんなことをすれば上司は自衛的になり、確証バイアスを強め、あなたに挑戦的な仕事を任せるべきでない、あらゆる理由を思いつくだろう。

 仕事が順調に進んでいないときは、正直にそれを明らかにし、前向きになること。問題に直面しても、それを隠してがむしゃらに努力すれば、ぎりぎりになって解決策が見つかるだろうと、あなたは思うかもしれない。だが、それがうまくいなかったときに上司に与えるインパクトは、あなたとの関係に一段とダメージを与えるだろう。ひょっとすると、修復不可能なほどに。

 上司に信頼されていないのなら、いきなりスターになろうとしないこと。上司の期待を確認して、自分の能力を示し、結果を出す人間としての評判を確立するという段階を踏むことが重要だ。