睡眠不足の弊害を最小限に抑えるもう一つの方法は、自分の脳以外を利用することだ。睡眠不足の眠たい脳が仕事上のネックになるならば、他のブレーンにもっと頼る方法を見つけよう。
たとえば、睡眠不足のときには、睡眠が取れているときよりも人に仕事を振るようにする(睡眠不足の影響を特に受けやすいタスクならなおよい)。
いつも以上に同僚やメンター、あるいはその仕事の専門家の助言を聞き入れる。意思決定支援システム(機械学習によるのものが多い)が導入されているような仕事ならば、睡眠不足によって自身の機能が低下している際、特に役立つだろう。
また、クラウドソーシングを通じて、外部の視点を活用することも可能だ。クラウドの中にもおそらく睡眠不足の人はいるだろうが、全体で見ればその日の平均睡眠時間はあなたよりもかなり多いはずだ。
現時点で他者への依存度を高める方法がない場合は、事後に見直しを依頼し、少なくとも重大な問題に発展しそうなミスがなかったか未然に確認しよう(人に頼めない場合は、休息が取れた日に自分でチェックする)。
こうしたアイデアから引き出される効果的かつ長期的な対策には、自然界に見事な模範例が存在する。
イルカは水中に住んでいるが、生きるために空気を取り入れなければならないという興味深い難問を抱えている。常に泳いでいなければならないが、泳ぐことと眠ることは両立できないのではないか。彼らがこの難問をどう解決しているかというと、脳の半分を眠らせ、残りの半分を覚醒状態にすることで泳ぎ続け、呼吸を続けているのだ。
もちろん、人間にはそんな解決策は実行できない。しかし、チームであればできる。
一部のメンバーが仕事をしている間にその他のメンバーを休ませ、今度はメンバーを交代し、常にリフレッシュした状態で仕事に取り組ませる。現実的ではないと思うかもしれないが、国際線の乗務員や病院の医師・看護師の間では当たり前に行われていることだ。
たとえば、仮眠室や仮眠ポッドがあれば、他のメンバーが仕事をしているときに一部のメンバーが仕事を中断し、睡眠を取って充電することができる。そうした場を用意することは、睡眠の価値を伝えるという副次的な利点もある。
その一方で、仮眠設備があると、短い仮眠を挟んだ長時間労働を常態化させるような企業文化をつくってしまうリスクもある。仮眠設備が激務を奨励するツールではなく休息のツールにするためには、発言と行動の両方で適切なメッセージを発信することが不可欠だ。
全体として、もっと睡眠を取る必要があることは誰もがわかっている。健康と仕事の能率のために、それをやってほしいと思う。
しかし、それができない場合でも、あなたには眠いときに仕事をするリスクを軽減させるための秘策がある。睡眠不足で無闇に仕事をして地雷を踏むのではなく、そうしたリスクを管理することのほうがはるかに賢明である。
HBR.org原文:You Need More Sleep. What Should You Do If You Can't Get It? July 28, 2020.
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