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危機は成長を実現する絶好の機会だと頭では理解していても、それを実践できるリーダーはほとんどいない。景気後退期を迎えると、回復後も再起できないまま業績が悪化し、競合に買収されたり、倒産したりする企業も多い。この問題は、アイデアが悪いから起きるのではなく、環境が変わっても人材や資金の配分を変えられないことで起きると、筆者らは指摘する。


「絶好の危機を無駄にしてはならない」ことは知っていても、それを実践しているリーダーはほとんどいない。

 筆者の一人が過去数回の景気後退期とその後の業績を調査したところ、17%の企業は生き残ることができず(破産申請、買収、株式非公開化など)、生き残った企業もその大多数──80%──が、3年後も景気後退前の成長を回復できずにいることがわかった。

 生き残った企業のうち、景気後退前の業績と競合の業績をいずれも上回る数字を上げて「景気後退からの脱却」を果たしたのは、わずか9%だった。これらの企業は外部環境の変化に対応して、攻撃(新規事業を含む成長機会への投資)と防衛(コスト削減と業務の効率化)の両方を進めるという繊細なバランスを取っていた。全体の支出は削減しながら、新しい取り組みのために資源を確保できたのだ。

 突発的な衝撃にも敏捷に対応できなければならないと認識したリーダーは、よりフラットに、より「アジャイル(敏捷)」に、より「混乱に耐えうる」企業を目指す。しかし、そのようなアプローチを採用している企業でさえ、危機が発生すると、なかなか迅速かつ積極的に対応することができない。

 筆者らの研究(グラティ)と個人的な経験(ウィードマン)から、問題は結局のところ、システムにあることがわかった。リーダーが戦略的に臨めるかどうかは、資源の配分にかかっている。したがって、危機を有利に活用するには、組織内の資源配分の基本的なプロセスを変える必要がある。