HBR Staff/Yaroslav Danylchenko/Cactus Creative Studio/Stocksy

リモートワークが浸透し、仕事のコミュニケーションが大きく様変わりする一方で、チームの一体感が削がれたり、イノベーションを育む土壌が失われたりすることに対する懸念も少なくない。そこで、各地に分散して働く従業員を一つにまとめるテクノロジーとして、注目されるのが「複合現実」だ。現実世界とバーチャル世界を統合し、新たなリモート環境をつくることで、むしろ生産性が高まり、コラボレーションが推進されているという。本稿では、この次世代技術が活用されている3つの領域を紹介し、さらなる可能性を論じる。


 2020年、知識労働者のほとんどは、ズームやチームズやスラックといったバーチャルな場所での会合を可能にする「複合現実(MR:Mixed Reality)」ツールに親しんでいる。

 現実世界とバーチャル世界を統合して新たな環境をつくることにより、ほんの9カ月前までオフィスで対面のやり取りに依存していた従業員は、架空の南の島でミーティングを開いたり、世界中に配信されるプレゼンテーション動画の目の前に「立ったり」、仕事のメッセージにタイムリーなGIFや絵文字を入れたりして、冗談を言い合ったり、チームスピリットを維持したりしている。

 だが、これらはMRが提供できる経験の氷山の一角にすぎない。すでに拡張現実(AR:Augmented reality)技術は、製品やサービス、工場の組み立てライン、あるいは手術の現場においてさえも、標準装備された機能となっている。

 コロナ禍が長引くいま、米国人のフルタイム従業員の42%が当面の間は在宅勤務をしているが、新たな形のMR技術によって、物理的なオフィスではなくバーチャルオフィスが主流になり、その過程で仕事の未来を再定義している。

 こうしたMR技術を応用すれば、企業はコストを削減し、利益を押し上げることができる。筆者のクライアント企業の多くは、これを利用して現実世界のオフィスのフットプリントを平均で3分の1減らし、分散して働く従業員を活気づけている。彼らの多くは通勤が不要になったことで、すでに生産性が高まっている

 長期的には、企業はMRを使って対面と同程度、あるいはもっと良質なコラボレーションとイノベーションのリモート環境をつくることができるだろう。

 すでに多面的な「コラボラトリ(コラボレーション+ラボラトリ)」とも呼ぶべきものの初期バージョンが登場し、知識労働者の生産性を高め、コラボレーションを推進している。その主要分野を3つ挙げよう。