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職場で自分のデスク周りにプライベートに関する物を置くのは、従来の社会通念では歓迎されてこなかった。だが、筆者らがフィールド調査と実験室実験を行ったところ、家族や親しい友人との写真を飾ることには思わぬ効用があることが明らかになった。経費の水増し請求や小口現金の不正流用といった、従業員の非倫理的な行為を抑制するというのだ。こうした不正行為によって年間収益の5%が失われていると推定されるが、従業員に家族の写真を飾るよう奨励することは、違法行為を削減する有望策になる。


 職場でプライベートに関する物を飾るのは、どの程度がよいのか。従来の社会通念では、家族の写真を飾っていると、現実逃避したいのかと思われる可能性があるため、そうした物は家に置いておくべきだとされる。

 しかし、筆者らの最近の調査では、個人的な写真を職場に置くと、予期せぬ好影響があることが明らかになった。

 成人労働者に対するフィールド調査と一連の実験を行ったところ、職場に大切な人の写真を飾っている人のほうが、風景や自分自身、見知らぬ人の写真を飾っている人や、写真をまったく飾っていない人よりも、経費の水増し請求や小口現金の不正流用といった非倫理的な行動を取る可能性が低かったのだ。

 最初の調査では、フルタイムで働く従業員に対して、デスク周りをパーソナライズしているかどうか質問した。していると回答した場合には、大切な人の写真を飾っているのかを含めて、どのようにしているのかを尋ねた。

 次に、その上司に対して、従業員が経費の水増し請求といった少額の金銭的不正をどの程度犯したかを評価してもらった。その結果、大切な人の写真を見える場所に飾っている従業員は、飾っていない従業員に比べて、経費の水増し請求が少ないと評価されていた。

 特筆すべきこととして、大切な人の写真が1枚でも飾ってあれば望ましい効果が見られたが、写真の数によって効果が高まる傾向は確認されなかった。