この効果をさらに検証するために、筆者らは、写真が実際に従業員の非倫理的な行動を減らしたのか、それとも単に上司の評価に影響を与えたのかを確認する実験を計画した。
ある実験で、大学の学部生を対象に、実験室で複数のタスクに取り組んでもらった。最初に、複数の写真立てを渡し、写真立てのどの機能が消費者にとって望ましいかをその場で評価させた。
被験者の半数には、自分の家族写真を挿入して評価させ、残りの半数には風景のストック写真を使用してもらった。被験者には、その写真を前に置いたまま、次のタスクを行わせた。このタスクでは、自己申告した成績に基づいて追加報酬を受け取ることができる。
第1のタスクとして、数学の問題(実際には解けない問題も多く含まれている)を解いてもらった。「解けた」と自己申告した問題1問につき25セント受け取れる。第2のタスクとして、サイコロを振らせた。目の数1目につき50セント受け取れる。つまり出た目が大きいほど、受け取る額が多くなる。
両グループのパフォーマンスに統計的差異はないはずだが、風景の写真を見ていた被験者は、家族や友人の写真を見ていた被験者に比べて、両方のタスクでかなり高い報酬を受けていた。
こうした結果が生じる理由として、人は仕事中のほとんどの時間、経済的な計算を働かせて物事を考える傾向があるが、大切な人の写真がそれを緩和するからだと考えられる。
職場では合理性、効率性、自己の利益が優先される傾向があるため、経済的な側面や影響を重視した意思決定がされやすい。そのマインドセットは職場にとって適切な場合がほとんどだが、他者への思いやりの低下や不道徳な行動の増加に結びついている。
筆者らの調査では、大切な人の写真を飾ることで、経済的な計算を働かせる思考の依存度が低下し、その結果として、金銭に絡んだ不正行為が減少した。我々は、それぞれの被験者が経費請求に関する判断を、主として経済的な意思決定と捉えたかどうかを測定することによって、これを明らかにしている。