組織に向けた実践的なアドバイスとしては、家族や親しい友人の写真を飾ることを中心に、従業員が自分のデスクをある程度パーソナライズすることを奨励すべきである。

 ただし、留意すべきだと考えられる重要事項も確認されている。

 たとえば、大切な人の写真を飾る潜在的コストが無視できない、あるいは他者と比べて高い場合がある。職場で「プロフェッショナル」と見なされるためにはコードスイッチング、つまり状況に応じて話す言語を切り替えることの必要性を感じている女性や有色人種の従業員にとっては、職場にプライベートを持ち込むのは難しいかもしれない。

 すべての従業員が抵抗なく、このような形で職場をパーソナライズできるインクルーシブな組織文化を育むよう努めるべきである。筆者らのフィールド調査では、写真を飾ることで上司による業績評価への悪影響は見られなかった。

 今回の研究によって、従業員に家族の写真を飾るよう奨励すると、組織にとって利益がある可能性が明らかになった。経費の水増し請求のように一見些細ではあるが、よくある従業員の非倫理的な行動は、積み重なれば組織にとって大きな損失となる。

 従業員の不正行為の結果、推定で年間収益の5%が失われている。その大部分は、資産の不正流用による違反(経費の水増し請求、在庫の盗難、現金の不正流用など)であり、ニュースの見出しに取り上げられるような重大な違反ではない。

 写真を飾るよう奨励することは、職場での金銭に関わる違法行為を抑制する有望な策となる。より広い意味においても、職場という物理的環境における視覚的情報は、非倫理的な行動だけでなく、一般的な職場行動にも影響を与える可能性があるため、組織としてそれらに意識を向けることを勧めたい。


HBR.org原文:Why You Should Encourage Employees to Display Family Photos at Work, October 15, 2020.


■こちらの記事もおすすめします
「誠実さ」を実践する組織をいかに構築するか
オフィスで蔓延する非倫理的行為の実情
倫理的に見られたい人が、かえって非倫理的な行為に走る理由