
自分が抱える仕事を部下に振り分けようと考えても、それがうまくいかないことは多い。最終的に自分でやり直したり、ミスをカバーしたりする必要が生じて、余計な時間が取られてしまう。画一的な権限委譲のアプローチを採用すると、こうした問題が起こりやすい。本稿では、権限委譲に失敗する4つの理由と、それぞれの対処法を示す。
頭が切れて有能な人材を採用しているにもかかわらず、マネジャーは仕事を抱えすぎることがよくある。特にチームの成長と発展の機会となる場合は、マネジャーは最優先事項に集中し、仕事を人に委任することがベストプラクティスだとされる。
この考え方は理論的には素晴らしいが、多くの人は困難な状況に陥る。権限委譲はよい考えだが、実際はうまくいかないことが多い。
アリは従業員1000人を擁する会社の経営者で、会社はイノベーションの最前線に立つ。買収された場合の企業価値は10億ドル近くと評価をされたこともある。しかし、会社の中で最も仕事熱心なのがアリ本人で、経営陣の層は薄く、家族との時間を欠き、いつも妻を失望させていた。
アリと筆者はコーチングセッションで、どうすれば自分の負担を軽くし、直属の部下の能力を育てることができるかを話し合った。最初に思いついた自明のアイデアは、権限委譲を進めることだった。しかし、アリは「権限委譲は決してうまくいかない。重要な仕事を任せるたびに自分で仕事をやり直すか、ダメージを回復させることになる」と話した。
セッションで、アリが画一的な権限委譲のアプローチを取っていることがわかった。これは失敗に終わるやり方だ。
彼が委任する仕事を特定し、実行方法を見出すことや、必要に応じて質問することは部下に委ねていた。残念ながらすべての仕事や従業員にこのやり方が適しているわけではなく、締め切りになってはじめて問題が明るみになり、アリが土壇場で事態の収拾に当たる羽目になっていた。
私たちは生産性の向上とフラストレーションの軽減を実現するため、より詳細な方法を考案した。この目的の中心にあるのは、仕事を委任する前に時間を取り、委任後に生じる可能性のある課題を理解し、先手を打ってそれらに対処することだ。
権限委譲に失敗するよくある4つの原因と、それらの対処法を紹介しよう。