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アメリカ大統領選挙はジョー・バイデンがドナルド・トランプに勝利したものの、選挙に不正があったという陰謀論は根強く、暴徒化した市民が国会議事堂を襲撃するという最悪の事態を招いた。企業は、民主主義や法の支配を当たり前のものとして享受するのではなく、この不可欠な制度を守り抜くために立ち上がらなければならない。筆者は、企業リーダーが最低限実施すべき3つの行動を提示する。


 アメリカの企業は長年、アメリカの制度的枠組みを当然のものとして受け止めてきた。民主主義や法の支配は誰かが守ってくれる。健全な社会を維持する活発で秩序ある対話は、今後も続いていく。だから企業は、粛々と利益の最大化に務めていればよいと思い込んでいた。

 しかし、2021年1月6日の出来事は、もはやアメリカの民主主義を当然のものと受け止めていてはならないことを明らかにした。直後の調査によると、45%もの共和党支持者が、米連邦議事堂への暴徒乱入を肯定している。それが本当ならば、何百万人ものアメリカ人が、選挙結果を力によって覆しても問題はないと思っていることになる。

 はっきりさせておこう。これは、アメリカ経済の長期的な健全性と、アメリカ企業の強さを根本から脅かす考え方だ。

 私がこれまで述べてきた通り、アメリカの企業は、アメリカの民主主義を必要としている。政府が、自由かつ公正な市場のルールをつくる能力と説明責任を持たなければ、市場経済は存続しえない。そして、政府が責任を問われ、正統と見なされ、世界の多くの地域で台頭しているような衆愚政治と縁故資本主義に陥らないよう確保できるのは、民主主義だけなのだ。

 私が知る限り、政府の大ファンだというビジネスパーソンは一人もいない。私自身、税金を支払うのは嬉しくない。しかし、コロナ禍が明らかにしたように、強い社会を維持するためには、強い政府(自由なメディアと活発な民間部門によって均衡を図られた、民主的に責任を問われる政府)を受け入れなければならない。

 そのような政府がなければ、公衆衛生や、きれいな空気や、分別ある反トラスト法といった公益への投資は、はるかに小さくなるだろう。そのような政府がなければ、富と権力を持つ者が政治と経済の両方を牛耳り、アメリカ経済を世界の羨望の的にしてきた起業のエネルギーやイノベーションや実験精神は窒息してしまうだろう。アメリカは、ロシアになってはならないのだ。

 民主主義を強化することは、自由市場資本主義(と数十億人の生活を変えてきた豊かさと機会)を幅広く存続させる唯一の方法だ。それは地球温暖化から格差拡大まで、世界的な脅威と戦う唯一の方法でもある。そのために企業は、リーダーシップをとらなければならない。それも、いますぐに。

 企業リーダーは、(少なくとも)3つのことをやるべきだ。