民主主義の支持を明言する

 この危機のさなかに、リーダーはその言動によって民主主義をサポートすることができる。そのためのカギを握るのは、政治ではなく市民としての権利義務にフォーカスすることだ。重要なのは結果ではなく、手続きであることを強調しよう。

 たとえば、2020年の米大統領選について、幅広い不正の証拠は見つからなかったことを50以上の裁判所と、各州の無数の職員(共和党支持者も民主党支持者もいる)と、司法長官(共和党員)が確認していることを指摘して、選挙の有効性を明確に擁護する。にもかかわらず選挙の結果を否定したり、証拠もなく投票詐欺の主張を延々と続けたりする候補者には、今後いっさい献金をしないと断固たる声明を出すこともできるだろう。

 アメリカ人は、政治家よりも企業経営者を幅広く信頼している。したがって、企業リーダーがこのようなメッセージを発信すれば、民主主義を信じる過半数の市民を結束させ、寛容と自制という不文律を改めて強化する助けになるだろう。

 行政学者のスティーブン・レビツキーとダニエル・ジブラットは、このような不文律が「民主主義の『ソフトなガードレール』の役割を果たす」と指摘している。「それは、健全な政治的競争が党派主義的な死闘へと転落して、1930年代のヨーロッパや1960年代と1970年代の南米で民主主義が破壊されたような事態を阻止する」

 これは突飛なアイデアではない。最近の『フィナンシャル・タイムズ』紙の記事によると、イェール大学経営大学院のジェフリー・ソネンフェルド教授は2021年1月5日、33人のトップエグゼクティブと電話会議を開き、企業はこの危機にどう対処すべきかを聞いた。すると、政治的姿勢はまちまちな33人が、「そろって憤慨していた」という。記事の一部を引用しよう。

「この電話会議で質問したところ、トランプの主張を支持する政治家は『反乱を支援・教唆している』と答えたエグゼクティブは88%、こうした上院議員の地元への投資削減を検討すると答えたのは50%超、選挙結果を否定する政治家には今後資金的なサポートをしないとロビイストに警告すべきだと答えたエグゼクティブは100%に達した」