民主主義をサポートする
協調行動を取る
企業は一致して、民主的規範と民主的手続き、そして分別ある政策を支持する行動を取ることができる。
たとえば、連邦と州の両方で、民主主義を大幅に強化する法案を通す努力をしなければならない。この時、政治におけるカネの役割を縮小したり、全有権者の自動登録制度、超党派の独立選挙区割委員会、優先順位付投票を導入したりするなど、すでに幅広く支持されている措置に力を注ぐべきだろう。
しかし、実に多くの企業リーダーが、よりよい統治やより公正な政府をサポートするメカニズムがないと感じている。実際、多くの地域や州では地元の経済団体が衰退して、ごく一握りの地元企業を代表するにすぎなくなった。全国レベルでも、米商工会議所やビジネス・ラウンドテーブル(BR)といった団体は、企業の目先の利益しか考えていないと思われがちだ。しかし、これは変えることができる。
私たちは、経済団体が公益をサポートするためにまとまった資金と努力を投じられるような、新しい機構をつくる必要がある。既存の機構を強化するのでもよい。それによって議員たちが企業を、民主主義を強化するためのパートナーと見なせるようにするのだ。
筆者が顧問を務めるリーダーシップ・ナウ・プロジェクト(Leadership Now Project)や、グレーター・ヒューストン・パートナーシップ(Greater Houston Partnership)など、国や州レベルで誕生している新たな団体は有望な出発点になるかもしれない。
問題の根本原因に取り組む
アメリカの民主主義を立て直すためには、現在の問題をもたらした根本原因に対処する必要がある。選挙は正当なもので、結果を尊重しなければならないと明言するだけでは不十分だ。
多くの一般市民が民主主義に見切りをつけようとしているのには、それなりの理由がある。それは「システム」が自分たちのために機能していないと感じているからだ。コロナ禍が到来して状況が悪化する前から、格差の拡大と社会階層の固定化は大きな怒りを生み、ポピュリズムを拡大させ、アメリカ建国当初から切り離すことができない人種差別という悪霊を目覚めさせた。
なぜこれほど多くの人が怒っていて、自分たちに不利に働くようにシステムが歪められていると思うようになったのかを、私たちは理解する努力をしなければならない。「エリート」が自分たちのことを気にかけていて、なんとかしようとしてくれていると信じるまで、彼らは危険なデマゴーグをサポートし続けるだろう。それ以外に解決策が見当たらないからだ。
企業は行動を起こさなければならない。個々の企業は、人種的・民族的にインクルーシブ(包摂的)になるために手を尽くすことで、違い生み出せるだろう。
従業員を尊厳と敬意を持って扱い、仕事の内容を見直して賃金の高い雇用を生み出す「ハイロード・エンプロイメント」システムも有効だろう。また、複数の企業が協力して、人種的平等とエンパワーメントをサポートすることもできる。地元の大学と協力して、地域の教育システムを再建するのもよい。
長年の研究から、所得分配の最下層にいる人々のウェルビーイングに有効と確認されている措置に、企業が共同で取り組むこともできるだろう。たとえば最低賃金の引き上げや基本的な福利厚生の提供義務化、コミュニティカレッジなど教育への大規模な投資、そしてきちんとした医療へのアクセス保障といった措置だ。
企業は、これまで以上に努力をしなければならない。アメリカの民主主義は、私たちを必要としているのだ。
HBR.org原文:Business Can't Take Democracy for Granted, January 08, 2021.