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睡眠不足が生産性やパフォーマンスにネガティブな影響を与えることは、誰しも耳にしたことがあるだろう。問題は「寝ていない」自慢に代表される、大きな認識不足だ。睡眠時間を削ってまで仕事をすることが優秀な人材としての証だというのは、大きな間違いだ。本稿では神経科学の研究成果から、睡眠不足時の脳に何が起きているのかを解説し、睡眠の質と量を改善することで、仕事に必要不可欠な力、すなわち高い集中力と注意力と忍耐力、ポジティブな気分とマインドセットを手に入れるための心構えを説く。


 ほとんどのものがそうであるように、睡眠も不足した時にその大切さを最も痛感する。

 残念ながら、その経験をしている人はあまりに多く、3~4割の人が睡眠不足の問題を抱え、米国では実に7000万人、欧州でも4500万人が慢性的な睡眠障害に悩まされている。

 睡眠時間が短くなるのは、決まって「やむをえない状況」によるが、上記の数字は、睡眠が生活のみならず仕事に対しても、いかに利益をもたらしているかが正しく理解されていないことを示している。

 さらに気がかりなのは、睡眠障害による心身の健康へのネガティブな影響に関する一般的な認識不足だ。我々の多く、すなわちリーダーも同僚も友人も、相も変わらず睡眠時間を削って働くことに誇りを見出していることが何よりの証拠である。まるで、それが優等生や優秀な社員への道であるかのように、だ。

 しかし、睡眠より仕事を優先するという人が実際にしていることは、単に質より量を取っているにすぎない。

 もしあなたが、仕事や勉強、家庭生活においてベストコンディションで臨みたいと思うならば、夜間に十分な休息を取り、それによって得られる力を活用するのが得策だ。すなわち、より高い集中力と注意力と忍耐力、そしてよりポジティブな気分とマインドセットである。

 初めて聞く助言ではないだろう。だが、睡眠の価値を理解するには、神経科学における最新の研究成果に耳を傾けるのが一番だ。神経科学は、睡眠が脳に与える影響や睡眠を十分に取らなかった場合の脳に対する影響についての研究に、多くの時間を費やしている分野だ。